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桐島、部活やめるってよ/朝井リョウのあらすじと読書感想文

2014年7月15日 竹内みちまろ 参照回数:

桐島、部活やめるってよのあらすじ


 田舎の高校の男子バレーボール部で、キャプテンでリベロを務める桐島が突然、部活をやめました。桐島は熱血漢で、キャプテンとしても部をまとめていましたが、副キャプテンでアタッカーの孝介とうまくいっていなかったと皆はささやきあいます。

 桐島といつも行動を共にしていた小泉風助がリベロのポジションで試合に出場することになりました。屈託のない孝介は、「ちゃんとレギュラーで公式戦出んの、初めてじゃね?」と話し掛けてきます。風助が複雑な感情を抱いてると、日野が2人きりの部室で「チャンスだと思って、がんばればいいと思うで、俺は」と声を掛けてきました。

 風助は桐島がいなくなって嬉しいと感じている自分に気が付きました。同時に、そんな自分を嫌悪します。しかし、試合が近づくにつれ、自分は桐島と同じようにできる、いや、桐島よりももっと上手にできると考えるようになります。

 試合が始まると、風助の体は動きませんでした。タイムアウトの際、桐島がいつも風助に聞いていたように、風助は日野に「どこがダメやった?」と聞きます。日野は驚きましたが、「いつもより構えが全然カタいって」と声を掛けます。風助は、桐島がキャプテンで、絶対的なリベロで、チームをまとめる力があったことを痛感します。風助は、桐島が戻ってくるまで、リベロのポジションで、ボールをつなごうと思いました。

 風助をはじめとして、ブラスバンド部部長の沢島亜矢、映画部で高校生映画コンクール(映画甲子園)で特別賞を受賞した前田涼也、ソフトボール部の宮部実果、野球部幽霊部員の菊池宏樹、バトミントン部で映画が好きな東原かすみなどの生活に微妙に変化が起こります。学校生活の中で桐島と直接関わっていたのは風助だけですが、それぞれが持つ苛立ち、やるせなさ、そして、闇が浮き彫りになっていきます。

桐島、部活やめるってよの読書感想文

 「桐島、部活やめるってよ」に登場する高校には階級が存在し、誰しもがその階級を意識していました。菊地宏樹は運動神経が抜群でイケメン。野球部のキャプテンからは、練習には出なくてもいいから試合だけには出てくれと毎回頼まれます。一方、映画部の前田涼也は、女子たちからはダサいと言われて、菊地などのグループには近づきません。

 ただ、菊地は、そんな風潮をどこか冷めた目で見ています。「未来はどこまでも広がっている。/違う、出発点から動いていないからそう見えるだけだ」と自分に言い聞かせることができるほどの感性を持っています。そんな菊地は、映画部が朝礼で表彰されてから、前田たちをダサいと感じることはなくなりました。むしろ、前田たちには、いくら女子たちから笑われようが、そんな事が一瞬でなくなってしまうくらいのものがある、とうらやましくすら思っています。同時に、何もない、何もしていない自分に対して、苛立ちを感じます。

 ダサいって何だろうと思いました。一番、ダサいのは、何もすることがなく、毎日の時間を無為に消費することかもしれないと思いました。もちろん、生きるとは何ぞや、というような大上段に構えた命題が作品の中で提示されているとは感じませんでしたが、前田のようにすべてを捨ててでも打ち込める何かを持っている人間は幸せだと思います。前田の場合は、理屈ではなく、ただもう映画が好きで、気付いたら映画部に入り、同じように映画が好きな仲間を見つけて、自分たちで映画を撮っていたのでしょうが、前田のように打ち込める何かがない人間は、少なくとも、打ち込める何かを探さなければならないのかもしれません。それができない菊地は、自分のことをダサいと感じているのかもしれないと思いました。

 ただ、世の中、といいますか、人間社会というものはそう簡単なものではないとも思いました。

 最後の章「東原かすみ〜14歳」では、14歳のかすみは、周りの目とか周りの評価とかではなく、自分の心に素直に生きた方がいいと感じていました。しかし、本編の高校に登場する(たぶん)17歳のかすみは、再び14歳のころに後悔したような自分に戻っているとも感じられます。日本社会、学校社会、女子社会というものの人間を抑圧する力とでもいうものを感じました。出る杭は打たれると言いますが、その出る杭を打つ人間たちは、自分は人目に触れない安全な場所にいるのかもしれません。そういった大衆とでもいうべきものこそダサいのかもしれませんが、たとえダサくても、従わざるをえない力を持っているのかもしれないと思いました。


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