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高校ダンス部の大会がついに横浜アリーナで開催、東京2020オリンピックにも開会式をはじめ高校生ダンサーの出演確定?

2019年11月9日 1時0分 参照回数:



グランプリの光ヶ丘女子高校と準グランプリの帝塚山学院高校フォトセッション
(写真:竹内みちまろ、2019年11月4日、横浜アリーナ)

 盛り上がりを見せている高校ダンス部。大阪府立登美丘高校の“バブリーダンス”がブレイクして以来、メディアに取り上げられる機会も増え、注目度を増している。

 2019年11月4日には横浜アリーナで、全国から選抜された強豪30校による年間チャンピオン決定戦「第1回日本高校ダンス部選手権公式選抜大会 グランプリ決定戦」が開催された。

 初の試みとなった同大会は、2008年に関西で高校ダンス部のための大会を立ち上げ、第4回大会となる2011年の夏の大会から全国大会に規模を拡大した一般社団法人ストリートダンス協会が、満を持して開催したもの。シンガーソングライターの福山雅治らが所属する芸能・エンタメ大手のアミューズが制作に参加していることも一部の関係者の間では話題となっている。

 大会当日、横浜アリーナにて、ストリートダンス協会の西元陽一専務理事にインタビューを行い、同大会を開始した趣旨と、今後の高校ダンス部界の展望を聞いた。

――非常に規模の大きな大会となりました。高校ダンス部の大会のためだけに横浜アリーナクラスの会場を借り切ったのは、おそらく日本初ではないでしょうか。まず、今大会の開催に至った経緯を教えて下さい。

西元専務理事:現在、ストリートダンス協会では、高校ダンス部のために3つの大会を開催しています。高校ダンス部日本一を決める「夏の公式全国大会」、1年生のみが出場できる新人戦となる「春の公式大会」、3 on 3のバトル大会となる「冬の公式大会」です。今回の「公式選抜大会 グランプリ決定戦」は4つめの大会となります。

4つの大会の中で、一番最初に始めたのは「夏の公式全国大会」です。ストリートダンス協会の目的は、ストリートダンス人口を増やすこと。ストリートダンスだけに留まらず、すべてのジャンルを含めたダンス人口を増やせば、ストリートダンスの人口も増やすことができると考えています。その考えのもと、2008年に夏の大会を開催しました。

2008年の夏の大会には40校が参加し、2019年の夏の大会には約500校が参加しました。私たちは、このような大会を運営するにあたり、質と量が大切だと考えています。2019年の夏の大会では、初開催となった四国大会を含めて、北海道大会から沖縄大会まで、全国の8つのブロックで合計13の予選大会を開催しました。

このような大会を開催するにあたり、ストリートダンス協会では、「質」と「量」が大切だと考えており、「量」の部分では、ダンス人口はちゃくちゃくと増えているといえます。

「質」に関しての施策としては、創部したばかりのダンス部のレベルをいかに上げていくかを考え、8年前に春の新人戦を創設しました。3月に行われる大会ですが、この大会の目的は、出場機会に恵まれない1年生たちに目的を与えることです。新人戦は、1年生だけが出場できる大会なので、ダンス部を1年間がんばってきたけど1年たって残念ながら止めてしまうという部員の減少にも歯止めがかかると考えています。

新人戦を創設した8年前の段階で、計画とまではいえないものの今回開催した選抜大会の構想はすでにありました。新人戦はボトムアップのための施策であり、一方で、選抜大会の目的は、強豪校が刺激し合うことでトップ30校のレベルをさらに引き上げることです。

そのため、選抜大会では、夏の公式大会には存在する出場人数制限の上限をなくし、ユニゾン(みんなが同じ振りで踊ること)などのベーシックな要素はできていて当たり前とみなされるため、ユニゾンに関する規定(採点基準)も撤廃しました。自由度を高めることで、部員たちが想像力を存分に使って作品を完成させ、それが強豪校のレベルをさらに引き上げることに繋がると考えています。そして、トップ30校が引っ張る形で、全国の高校ダンス部のレベルも上がっていくと思います。

――今回、アミューズさんが制作に参加していることも特徴的だと思います。芸能・エンタメ分野で実績のあるアミューズさんが参加することで、マスコミにさらに取り上げられるようになることも予想されます。アミューズさんとタッグを組んだ理由は?

西元専務理事:まず、高校ダンス部のパフォーマンスが「エンターテイメント」なのか「競技種目」なのかという問題ですが、現実的に、すでにエンターテイメント化がなされています。

今、全国の高校でダンス部の創部が始まっているのですが、少子高齢化にともない高校生の人口が減り続ける中、ダンス部の部員たちは体育祭や文化祭という枠組みを超え、入学式や地域のイベント、ショッピングモールなどで、自分たちの高校の魅力を伝えるために踊っています。マスのメディアには載らなくても、それぞれの地域では「●●高校のダンス部のダンスを見に行く」ということが当たり前のこととして浸透しています。

選抜大会に出場するのは、500校の中のトップ30です。私たちは「こんなにすばらしい作品がある」ということを全国のみなさんにテレビを通じて見て頂きたいと考え、エンターテイメント業界の方々にお声がけさせて頂き、今回のアミューズさんとのタッグが実現しました。

――エンターテイメントであると同時に、カルチャーとしても認められているのではと感じています。審査員からは講評で「高校ダンス部の活動がこれだけ盛んなのは世界中で日本だけでしょう」との言葉もありました。高校ダンス部の活動を、カルチャーとして、世界に発信したいという考えは?

西元専務理事:高校ダンス部のレベルは自信を持って勧められるところまで上がっています。それは国内に留まりません。実際に、夏の公式大会でベスト10に入る学校が、アメリカで開催されるダンスの世界大会に出場したら、だいたいが優勝か準優勝という結果に終わります。惜しくも優勝を逃して準優勝という場合でも、優勝したチームは、高校ダンス部のチームではないまでも日本人によるチームだったりします。

今、ダンスの世界では、“ダンスの世界一を決める大会がアメリカで開催され、優勝か準優勝かをかけて日本人チーム同士が競う”という現象が起きています。個人的見解ですが、それは非常にナンセンスだと思っています。ワインのソムリエの大会がフランスで開催され、コスプレの世界一を決める大会が日本で開催されるように、ダンスの世界一を決める大会も日本で開催されるべきだと思っています。

将来的には、この選抜大会が「ダンスの世界一を“日本で”決める国際的な大会」に育ってほしいと思っています。“世界中から高校ダンス部のチームを集めて……”などという具体的な構想にはまだ至っていないのですが、ただ実際に世界で一番強い高校生ダンスチームが日本にいるわけですから、世界一を決める大会を日本で開催することは、絵空事ではなく、現実的なことなのではないかと思っています。

――これまで、ストリートダンス協会は、エンターテイメント業界とは距離を置き、大会には極力マスコミを入れず、大会を重ねて実績を積みあげることに注力してきたという印象があります。登美丘高校さんのブレイクをはじめ色々な要因が重なって今があると思いますが、今後は、情報発信を積極的にしていく方針でしょうか。

西元専務理事:おっしゃる通り、ストリートダンス協会は、エンターテイメント業界とは距離を置いてきました。それは、夏の大会を全国大会に拡大した第4回やその翌年の第5回の大会のころは、エンターテイメント業界の方たちに自信を持ってお見せするレベルには達していないと考えていたからです。

私たちは、もっと、もっと質を高めてからみなさんに観て頂き、評価して頂きたいと思いながら、質と量の施策を行ってきました。その結果、大会に出場する学校数も、その中の強いチームの数も増えて、みなさんに自信を持ってお見せできるレベルの学校が増えてきました。その先駆けが、登美丘高校ではないかと思っています。

――OGやOB、関係者の枠を超えて広く一般に「高校野球のファン」という層がありますが、同様に、「高校ダンス部のファン」という人たちが生まれてほしい?

西元専務理事:ダンスという競技がどれだけの人に愛されているかということなのですが、大昔、ホモサピエンスは狩猟に行き、獲物を狩って、火を起こし、円を描いて踊っていました。踊りという文化は歴史が深いのです。また、人間なら誰しも好きな音楽が流れてきたら自然と体が揺れますが、それもダンスだと思っています。

特殊なルールなどに精通しないとなかなか楽しんで観ることができないという競技もありますが、ダンスにはエンターテイメントの要素があるので、自分で踊ったことがない人でも楽しむことができます。高校ダンス部の作品を楽しむ人には増えて頂きたいです。

――高校ダンス部の部員たちに、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開会式に出演してほしいですか?

西元専務理事:仮に、すでにストリートダンス協会がオリンピックに関する様々なお話を頂いていたとしても、立場上、言うことはできないのですが、ロンドンオリンピックの際、ストリートダンス協会が運営しているストリートダンス検定の1級合格者たちが、日本代表としてロンドンに呼ばれ、パフォーマンスを行い、オリンピックに貢献しています。ダンスというエンターテイメントは世界で愛されています。すでに「開会式に高校ダンス部の部員たちに出演してほしいか、ほしくないか」という段階ではなく、日本で開催されるオリンピックなので、日本の中から、プロのダンサーから高校生ダンサーまでが出演することは自明の理だと考えています。

――最後に、ダンス部に青春を捧げた高校生たちにどんな大人になってほしいかを教えてください。

西元専務理事:高校生諸君は、社会に出る準備段階でダンスに取り組んでいます。最近は、社会に出たときにダンスを仕事にできる人たちも生まれてきてはいるのですが、全員がダンスを仕事にできるわけではありません。

私たちがダンス部の活動で学んでほしいことは、「コミュニケーション能力」と「適応能力」です。ダンス部の活動は、踊るだけではなく、選曲や衣装、構成をはじめ、ものすごい量の話し合いがチームで行われています。そのため、コミュニケーション能力を培うことができます。冬の大会は、DJが音楽を流した瞬間にアドリブで踊り始めるのですが、適応能力の訓練に直結します。

例えば武道でしたら、礼儀正しさなどを特に鍛えることができると思いますが、ダンスに関しては、特にコミュニケーション能力と適応能力を培うことができると思っています。企業が求める人材の資質の1位は、長きに渡り「礼儀正しさ」だったのですが、それが15年ほど前に、1位がモバイルやインターネットなども含めた「コミュニケーション能力」、2位が「適応能力」に変わりました。

高校生のみなさんには、ダンス部の活動を通して「コミュニケーション能力」と「適応能力」を磨いて頂き、将来、社会の中でリーダーシップを発揮して頂きたいです。 (インタビュー・文/竹内みちまろ)





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「第1回日本高校ダンス部選手権公式選抜大会 グランプリ決定戦」(写真:竹内みちまろ、2019年11月9日、横浜アリーナ)



「第1回日本高校ダンス部選手権公式選抜大会 グランプリ決定戦」(写真:竹内みちまろ、2019年11月9日、横浜アリーナ)



「第1回日本高校ダンス部選手権公式選抜大会 グランプリ決定戦」(写真:竹内みちまろ、2019年11月9日、横浜アリーナ)



山村国際高校「第1回日本高校ダンス部選手権公式選抜大会 グランプリ決定戦」(写真:竹内みちまろ、2019年11月9日、横浜アリーナ)


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