本文へスキップ

狛江高校ダンス部コーチに聞く、高校ダンス部が優勝するために必要なことは?

2018年9月28日 19時30分 参照回数:

狛江高校ダンス部のTomokoコーチ

狛江高校ダンス部のTomokoコーチ (写真:竹内みちまろ、2018年9月、狛江高校にて)

 注目を集めている高校のダンス部。今年も夏に開催された「日本高校ダンス部選手権(ダンススタジアム)」の様子は、連日、メディアで大きく取り上げられました。ニュース映像で見る高校生たちの一糸乱れぬダンスや個性的なパフォーマンスに目を奪われた人も少なくないのでは。

 年々、レベルが上がり続けている高校ダンス部の大会ですが、高校生たちは、強豪チームがひしめく全国大会で結果を残すために、どんなことを考えて取り組んでいるのでしょうか。

 今回は、毎年6月に開催されている高校ダンス部を対象とした「日本ダンス大会」にて、2017年に優勝し、2018年に3位という成績を収めた東京都立狛江高校(東京・狛江市)にお邪魔して、ダンス部のTomokoコーチ(貝塚知子さん/東京都調布市出身)にお話を伺いました。

 Tomokoさんは、5歳でクラシックバレエのスクールに入り、小学4年生からジャズダンスとヒップホップダンスも習い始めます。狛江高校に進学した後はダンススクールに通いながらダンス部に入り、2年生のときは部長を務めます。高校卒業後はダンスの専門学校に通い、プロのダンサーになりました。現在、ダンサーとしてアーティストのバックダンサーやCM・MV・ショーに出演するほか、ダンススクールのインストラクターやダンスの専門学校の講師もしています。

ダンス部を指導するTomokoコーチ

ダンス部を指導するTomokoコーチ (写真:竹内みちまろ、2018年9月、狛江高校にて)

 そんなTomokoさんが、母校でもある狛江高校にダンス部コーチとして訪れるのは週に1、2回。インタビューの日も、生徒たちを厳しく指導していました。

−技術面で、どんなことを気をつけて指導していますか?

 ダンスのスクールなどを見ていると、最近、振り付けだけをやる先生も多いのですが、私は振り付けだけではなく、ストレッチから筋トレ、基礎トレーニングなど、どこを伸ばしているのか、どこの筋肉を使って動かしているのかという基礎的なことも部活で学んでほしいと思っていますので基礎を重視しています。

−狛江高校ダンス部が強豪校として全国的に知られるようになったのはいつごろからですか?

 去年の「日本ダンス大会」で優勝したのですが、その子たちのひとつ前の学年が1年生のときに東日本規模の大会の新人戦で優勝し、2年生のときに「ドラムライン」というチアーの衣装で踊る作品で関東規模の大会で1位になりました。その学年からという感じです。

−今年の「日本ダンス大会」で3位になれた要因は?

 「日本ダンス大会」ではその前の年に優勝できたので、なんとなく、ここをこのようにしたら評価されるということは分かっていました。3位になった今年の作品「仮面舞踏会(マスカレード)」には、衣装にしろ、構成にしろ、スキルにしろ、評価されるための最低限必要なことは全部、盛り込んでいます。それ以上のところは、部員のみんなががんばったおかげです。

−8月の「日本高校ダンス部選手権」では同じ作品で21位という結果でした。高校生のダンスの大会は、大会によって、審査基準が違うのですか?

 違います。「日本ダンス大会」は、高校生らしさやアート的なことも重視している感じがあります。「日本高校ダンス部選手権」では、スキルやパワーが必要で、一般受けする作品の方が点数が高かったのかなと思います。

−「日本ダンス大会」と「日本高校ダンス部選手権」に、仮に、全く同じチームが全く同じ作品で出場して、全く同じパフォーマンスをしても、順位は全く違うものになるということ?

 そういうことです。審査員も違いますし、審査をする際の審査員席からステージまでの距離や角度も違います。全く同じパフォーマンスをしても、結果は全く違うものになります。

−作品はコンテスト志向で作るのですか、それとも、アート志向で作るのですか?

 コンテストに出るからにはコンテスト志向で作品は作っています。構成などはコンテスト寄りになっています。ただ、踊って見せるだけの作品には私はしたくないので、毎回、アート的な面でもテーマを決めて作品を作っています。

−大会で結果を残すには、作品を作る際に特定のひとつの大会で審査員に認められるよう、特定のひとつの大会の審査基準や審査環境に狙いを定める必要があるのかなとすら思えます。

 難しいところですね。ただ、どの大会でも安定した好成績を残している久米田高校さんはすごいです。

−確かに、大阪府立久米田高校さんの作品には圧倒されました。ランウェイのシーンの迫力とか、半端なかったですね。大阪の高校は、なぜ強いのですか?

 大阪の子はメンタルが強いです。大阪の子と比べると、東京の子はおとなしい感じです。気質でしょうか。

−高校ダンス部が、大会で優勝して日本一になるには何が必要ですか?

 メンタル面では、本番でしか出せない力というものがあります。練習でいくらトライしても、本番のパワーに負けてしまうこともあります。ただ、練習の段階で、全員が“私達にはもうこれ以上のことはできない”というレベルにまで完璧に仕上げなければなりません。そのうえで、本番でもミスをせずにやりきることが必要です。

−高校ダンス部の大会は、レベルが急激に上がっていると聞きますが。

 急にではないのですが、年々、大会のレベルは上がってきています。狛江高校が昨年の6月に「日本ダンス大会」で優勝したときは「Cats」という作品でした。黒猫の格好をしてパフォーマンスをしたのですが、黒猫の格好をしたことが「衝撃的」とよく言われました。ただ、今年の大会を見ていると、どの学校も工夫をして個性を出してきています。衣装もバラエティに富んでいます。黒猫の格好をするだけでは、もう「衝撃的」とは言われないと思います。

−今の大会で優勝するためには、何が必要ですか?

 今の大会は、完璧な演技をするだけではなく、“それプラス何か”という、「プラスα」の戦いになっていると思います。狛江高校が優勝できたときの「プラスα」は「衝撃」だったと思います。

−理屈では説明できないのかもしれませんが、審査員だけではなく観客も含めて会場にいる全員の心を奪ってしまう演技というものがあると思います。見終わった瞬間に全員が「これだ!」と納得してしまうほど会場の空気を自分たちのものにしてしまう秘密みたいなものはあるのですか?

 そうですね。その日のモチベーションだったり、審査員にどこまで伝わるかということで決まると思います。

−そういうパフォーマンスを成し遂げるには何が必要ですか?

 本当に何が必要なのでしょうね。ひとつ言えることがあるとしたら、そういったパフォーマンスを生み出すには、やっている側の全員の気持ちがひとつになることが大事です。

 ***

 狛江高校ダンス部は、例年、6月の「日本ダンス大会」で3年生が大会への出場から引退していましたが(ダンス部からの引退は9月の文化祭)、今年から、3年生が8月の「日本高校ダンス部選手権」まで出場することになったそうです。

 Tomokoさんに、「今、1番、目指したい大会は?」と質問してみると、コーチとしての個人的な考えとして、「どの大会でも優勝を目指しているのですが、狛江高校がまだ結果を残せていないのが夏の大会(=日本高校ダンス部選手権)なので、夏の大会ですかね」と話してくれました。

 狛江高校ダンス部は、文化祭後に、新しい代が、新しい作品作りに取り組みます。狛江高校ダンス部の新しい戦いが始まるのですが、次はどんな作品を作り上げて、大会ではどんな「プラスα」を見せてくれるのでしょうか。

 狛江高校ダンス部に注目です。

(インタビュー・文・写真:竹内みちまろ/取材協力:都立狛江高校)


→ トップとの差に挑む高校ダンス部の戦い、狛江高校&山村国際高校インタビュー


→ 都立狛江高校ダンス部、「仮面舞踏会」で存在感を発揮【第11回日本高校ダンス部選手権】


→ 大阪府立久米田高校「マドンナ」を表現し準優勝【第11回日本高校ダンス部選手権・ビッグクラス】


「ダンス」の記事一覧



運営会社

株式会社ミニシアター通信

〒144-0035
東京都大田区南蒲田2-14-16-202
TEL.03-5710-1903
FAX.03-4496-4960
→ about us (問い合わせ) 



ミニシアター通信