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「もしドラ」のあらすじと読書感想文/もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

2012年7月30日 竹内みちまろ 参照回数:

もしドラのあらすじと読書感想文


 「もしドラ」でおなじみの小説『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(岩崎夏海)。AKB48の前田敦子さん主演の映画版は第35回日本アカデミー賞話題賞に輝き、前田さん自身も第21回日本映画批評家大賞新人賞を受賞しました。ちょうど、前田さんがAKB48からの卒業を発表していた時期でしたので、前田さんの女優としてのさらなる活躍に期待を寄せた人も多いのではないでしょうか。今回取り上げるのは、小説のほうですが、あらすじと読書感想文をまとめておきたいと思います。

 高校2年生の川島みなみは、夏休み直前の7月半ば、突然、野球部のマネージャーになりました。高校の同級生で幼なじみの宮田夕紀が野球部のマネージャーでしたが、治る見込みのない病気のため長期入院していました。みなみは、夕紀の留守を守り、夕紀を安心させるため、マネージャーになりました。

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 みなみと夕紀が通う高校は、東京の西部にある大学進学率がほぼ100パーセントの都立高校。野球部は、よくて3回戦止まりの実力。夏の甲子園の予選に負けて3年生が引退した野球部に、みなみが初めて練習に参加すると、グラウンドに姿を見せたのは23人中、5名だけ。乱れているというわけではありませんが、規律がなく、ゆるみ放題でした。しかし、みなみは、「野球部を甲子園に連れていく」という目標を持っていました。「いきたい」ではなく、「いく」と決めていました。みなみは、そのことを監督や部員達に打ち明けました。反応は、「ムリ」「甲子園に出るために野球をやっているわけじゃない」「三回戦突破くらいを目標にしておいた方が無難だよ」というものでした。みなみは、「面白い」「誰にも相手にされないからこそ、逆にやりがいもあるというものだ」と思いました。

 野球部のマネージャーになったみなみが最初にしたことは、「マネージャー」という言葉を広辞苑で調べたことでした。マネージャーは、管理や運営などのマネジメントをする人だと知ったみなみは、近所の大型書店に行き、店員に、マネージャーやマネジメントに関する本を尋ね、『マネジメント』(ピーター・F・ドラッカー/上田惇生訳)を勧められました。『マネジメント』は経営の本で、野球については何の記載もなく、みなみはがっかりしましたが、それでも、「世界で一番読まれた本」という言葉に期待を寄せ、読み進めました。

 本書は、あとがきで著者が書いているように、もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら(どうなるのか?)、そこに書かれている「マネージャー」という存在を自分のことだと勘違いし、本の通りにマネジメントを進めたらどうなるか? というひらめきから出発しています。

 登場するエピソードも、野球部にとっての顧客とは一体誰なのか? 働く人たち(野球部員)に成果をあげさせるにはどうすればよいのか? やりがいを与えるために部員にどう責任を持たせればよいのか? どうすれば古い常識を打ち壊し新しい価値を創造することができるのか? などにみなみが悩み、監督や部員、そして、『マネジメント』の助けを借りて実践していくというもの。みなみは、「送りバント」と「ボール球を打たせる投球術」という高校野球を陳腐にしているという古い常識を捨て、「ノーバント・ノーボール作戦」(送りバントをしない攻撃/ストライクだけで勝負する投球)を打ち立てます。

 無名の都立高校が、甲子園常連の私立強豪校がひしめく西東京で、予選を兼ねた大会に優勝し、甲子園の切符を手にするというストーリーですが、クライマックスの試合の場面は、それまでみなみが実践してきたことが次々と効果をあげ、チームは勝ち進んでいきます。実戦のスリルと、ピンチを乗り越える爽快感は読み応えがありました。

 キャラクターという点でいうと、みなみは、真っ直ぐで、自分や社会を冷めた目で見るようなところがなく、さらに自分が周りからどう思われているかなど考えない、現在では貴重ともいえるかもしれない高校生らしい高校生。『マネジメント』という本に出会い、「どうすれば」そこに書かれていることを実行できるのかだけを考えます。「なぜ」そうする必要があるのかという疑問を持たないという点では、例えば、キリスト者の人が「何々をしなければならない」「何々をしてはならない」という教えを実践し、なぜなら「聖書にそう書いてあるから」という一言で片付けてしまうのと同じように、「なぜ」という発想は皆無で、「どうすれば」だけを行動に移します。いい悪いということではなく、みなみや部員たちの姿は、高校生の姿としては感動的だと思いました。へんに大人ぶって、なぜこんなことをするのだろう、こんなことをしたら周りからどんな目で見られるだろうなどと考えることをせず、「どうすれば」目的を達成できるのかだけに必死になります。

 「もしドラ」を読み終えて、「一生懸命」というのが、本書の根底を流れているテーマだと思いました。若者が夢を持てないといわれ、あきらめと冷め切った目ばかりがまん延してしまっているともいわれる現代社会では、貴重なことかもしれないと思いました。


→ 「もしドラ」第2弾『もしイノ』のあらすじと読書感想文/もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら


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