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ハダカの美奈子のあらすじと読書感想文

竹内みちまろ 参照回数:


 テレビ朝日の大家族ドキュメンタリー番組「痛快! ビッグダディ」への出演から人気が爆発した林下美奈子さん(30)が自身の30年間の人生を振り返った自叙伝『ハダカの美奈子』を読みました。内容と感想をメモしておきたいと思います。

 『ハダカの美奈子』では、まず、約2年間の清志さんとの結婚生活に終止符を打ったことが綴られていました。「清志さんと、そして子どもたちとの別れはやっぱり悲しい」と心境を明かしていました。

 小豆島での生活を振り返る中では、テレビ番組「痛快! ビッグダディ」の中で放送された内容について、“どうせ台本があるんでしょ?”などと言われたことがあるそうですが、内容は全部ガチで、「撮影されてるから、ちょっとガマンして黙っておこう」などという「計算ができる性格じゃないしね」と書いていました。また、美奈子さんは「あたし、自分が上に立ちたい性格なんで、清志さんとは何度もぶつかった」と明かしています。テレビ番組では、美奈子さんと清志さんのケンカの場面が何度も放送され、それまでの大家族ものを期待していた視聴者が面食らう回もありましたが、2人はケンカばかりしていたわけではないそうです。ただ、ケンカは多かった模様。また、清志さんとの「性生活は充実していた」と記す一幕もありました。「清志さんは『自分ひとりだけ気持ちいいのはイヤだ!』って人だから、『ああ、愛されているんだな』っていつも感じてた。あたしも、『清志さんに気持ちよくなってほしい』って、自然と思えた」と振り返っていました。

 ただ、「別居したあとも、離婚を決めたあとも、清志さんはあたしの身体を求め続けた」といい、同時に、「別れるって決まっているのに、身体の関係が続くことに納得できなかった」とあります。清志さんに抱かれるたびに、美奈子さんは、「『あたしのことを好きなら別れないでほしい』『こんなに愛してくれるのになんで?』って思うと、ますますワケがわからなくなって、いろんな感情が自分の中で消化できなくなってしまった」と振り返っています。別居については、「別居すると言われたときは、やっぱり寂しかった。こんなに近くにいるのに、なんで一緒にいられないの? 車で20分だよ……あたし、上手に別居なんかできないよ。清志さんが考えている別居の意味が最後までわからなかった」と素直な気持ちを記していました。

 美奈子さんは、純粋で、寂しがり屋で、人を愛することができる人なのだなと思いました。清志さんとの離婚が決まってから時間がたち、心の余裕ができた後は、「もっと早く、清志さんのことをわかっていれば、離婚せずに済んだのかもしれない」と思うことができたとのことですが、美奈子さんは、計算したり、ガマンしたりすることをしない性格で、感情に素直で、また「なんで?」と思ったらそのことが気になって何も手につかなくなる性格なのかもしれません。「なんで?」と思っても、“しょせんは他人だから”とケリをつけてしまうこともできますし、親子と違って、夫婦は“しょせんは他人”ともいえる関係かもしれません。いい悪いは別にして、“しょせんは他人”と割り切るべきところは割り切って、適度な距離を保ちながら、2人にとって理想的な夫婦関係を模索していくことも、“大人の選択”なのかもしれません。しかし、美奈子さんには、そういった発想がなく、人を愛したら、自然に相手にも自分を愛してほしいと願い、夫婦になったらお互いを思いやることが当たり前で、そうじゃないときは「なんで?」と心から悩む人なのだと思いました。夫婦関係や、人格や、性格には正解はありませんが、美奈子さんは純粋なゆえに、必死になり、「いまの幸せを守り抜くためにはどうしたらいいだろう」と悩んだのかもしれないと思います。

 『ハダカの美奈子』には、清志さんと出会う前の美奈子さんについても書かれていました。美奈子さんは「愛情に飢えていた」そうですが、技術者だった父親と、15歳の美奈子さんが妊娠の可能性を打ち明けても「えー、マジで〜?」などと返すあっけらかんとした性格(?)の母親と、弟がいましたが、美奈子さんが中学に入ってから、父親の様子が変わり、「会社でイヤなことがあった日は、帰ってきてからあたしに手を上げるようになった」そうです。美奈子さんは「ここまで理由のない怒りをぶつけられたことは初めてだった」と振り返っていますが、父親はいきなり「家中を掃除しろ」と美奈子さんに言いつけて、一晩中、美奈子さんに掃除をさせ、夜中に眠くなった美奈子さんがつい横になってしまうと「何寝てるんだよ!」と怒鳴り散らしたそうです。掃除は父親の気が済むまでやらなければならず、いつ気が済むのかもわからず、そもそも、なぜ掃除をさせられるのかもわからず、「グーで思いっきり殴られて、その衝撃と痛みで何度も気を失い」、美奈子さんが泣くと、「泣くな!」と怒鳴られてさらに殴られ、美奈子さんは必死に涙を堪えますが、それでも痛いと自然と涙が出てしまい、「泣いてしまってごめんなさい」と土下座して何度もあやまりますが、結局、一度も許してもらえなかったとのこと。父親の虐待はエスカレートして、美奈子さん「専用のおしおき道具」である木の棒で腕や足を叩かれたり、ムチでたたかれたり、モノを投げられ、生ごみをぶちまけられたりしたそうです。

 読んでいて、なぜお父さんがそうなってしまったのかについては何も書かれていませんでしたが、こんな過去を振り返るのは辛かっただろうなと思いました。ただ、美奈子さんは、「痛快! ビッグダディ」のテレビ放送を見た父親が「オレの孫が一番可愛いなあ」などと誇らしげに言っていたという話を聞いて、「――ホントに、あの人は。ただの意地っ張りじゃんか」「なんだか思い出すだけで、涙が止まんないよ……」と振り返っていました。美奈子さんは、家族を愛することができる心を持った純粋な人なのだなと思いました。

 あと、美奈子さんは、いわゆるタレントではありませんが、『ハダカの美奈子』は、ひとつのタレント本として読みました。自叙伝を読む時は、特にそれがタレント本である場合は、エンターテイメントメディアでは取り上げられない情報や、本文では直接書かれていないことに注目して読みます。本には書かれているのにメディアでは取り上げられないことは、メディアで取り上げられないがゆえに本人としては書きたかった(=何かを伝えたかった)のだろうと思える時がありますし、本文で直接書かれていないことは、何らかの理由があって書かなかった(書けなかった)ことでしょうし、そういった思いが行間からにじみ出てくることがあります。そういった点でも、『ハダカの美奈子』は興味深かったです。


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