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超整形美人/ヴァニラのあらすじと読書感想文

2013年11月13日 竹内みちまろ 参照回数:

超整形美人のあらすじ


 「超整形美人」は、ヴァニラさんが「鉄仮面」とあだ名をつけられ、イジメられた小学生・中学生時代から、イジメがなくなり友達から雑誌が回ってくるくらい活発になった高校時代、音楽活動、家庭環境、整形資金を貯めるための夜の仕事、何人もの男から「あなたの奴隷にしてくれださい」といわれる美を手に入れてからのことなどが記されています。

 イジメが始まったのは小学2年生の時。マイホームを買ったため、両親、6歳年下の弟と4人で田舎町に引っ越したときから。転校したヴァニラさんは、みんなの前で自己紹介をしたら、教室から「ブスじゃん」「ダセェ名前」のつぶやきが起ります。堅い仕事をしていた父親は、弟はかわいがるのですがヴァニラさんには「お前は、いらない子だ」「出てけ!」と激しい折檻を加えます。あるときヴァニラさんが「みんなが私をブスっていう……」と打ち明けると、「お前はブスなんだからしょうがない。整形でもするしかないだろう」と言い放ちます。ヴァニラさんは漠然とは感じていたとのことですが、父親からはっきりと「ブス」といわれ、は「私って、そんなにブスなんだ。親の目にもかわいく映らないほど、ひどいブスなんだ」と感じてしまいます。ヴァニラさんは緊張やストレスから体を怖し、通院。父親は家の中では怒鳴り散らし、物を投げつけ、暴君として君臨していました。ヴァニラさんの母親は最後はノイローゼになってしまいます。また、父親は、ヴァニラさんが整形をして顔を変えても、ヴァニラさんが整形したことには気が付いていなかったとのこと。

 そんなヴァニラさんですが、いつもヴァニラさんをかわいがり心配してくれるおばあちゃんが大好きでした。ヴァニラさんはおばあちゃんの家に行くのが大好きで、おばあちゃんの家に行けばガラスケースの中に大切に納められていたフランス人形に会うこともできます。ヴァニラさんはフランス人形を初めて見たときの衝撃を忘れられず、ヴァニラさんの中に、美しいものに対する信仰ともいえる感情が生まれました。「あのフランス人形が、私の理想」「あのフランス人形が、私の本来の姿」という思いが芽生え、「だから私は、元の自分に戻るだけなの。整形をして、ほんとうの私を取り戻すの」と決意。そして、「魔法を解くきっかけ」が「整形」だと確信します。高校卒業後の就職先も決まっていたころ、ヴァニラさんは、アルバイトで貯めた7万円を持って、まぶたを二重にする手術を受けました。ヴァニラさんにとって「整形」は目的ではなく、「ヴァニラという作品づくり」のための手段でした。

 また、「超整形美人」には、なぜフランス人形が自分の本来の姿だと思ったのかや、そう思うまでのエピソード、「ヴァニラ」という名前の由来、ヴァニラさんの美意識、夢、結婚に対する考え、もし子どもが「ブス」だったらどうしようという不安、ヴァニラさんの使命なども紹介されています。ヴァニラさんのすべてがわかる一冊になっていました。

超整形美人の読書感想文


 「超整形美人」を読み終えて、ヴァニラさんは外見もきれいな方ですが、心も美しい人なのだなと思いました。

 ヴァニラさんは「私は必死で生きた」と記します。重いひと言ですが、夜の仕事をしながら、「生気のないフランス人形」になるために、整形を繰り返します。「カスタムをして外見を洗練させ、自然な笑顔を見せられるようになったことで、私の周りに人が増えてきた」とも。「美しくなるということは、自分を持つということ」「美しくなるために生きることは、自分のために生きること」とのこと。

 でも、ヴァニラさんは、イジメられることの辛さや、「ブス」と言われることのやるせなさも体験しているので、自分をイジメた中には、“明らかにヴァニラさんよりもブスなクラスメイト”もいたそうですが、“あんたのほうがブスじゃん”とは言わなかったそうです。ヴァニラさんは、「日本という国はブスが生きづらい国」と断言し、ブスでいる限り「カースト」の上には行けないという現実を味わいますが、卑屈にならず、「自分に自信、持ちにくいよね。でも、自分で自分を愛するのに邪魔になっていることを、ひとつひとつと除いていけば、そのうち希望の光が見えてくる」「繰り返しブスと罵られて自信がなくなっている子は、顔を少しずつ変えていこうよ」と呼びかけます。ヴァニラさんは、自尊心と尊厳を持って生きている人なのだなと思いました。

 ひとつだけ、わからないことがありました。ヴァニラさんは、「私はもう自分のことを人間だとは思っていない」「『ヴァニラ』というのは、ひとつの作品」「私はそれを作るアーティストでもあるし、私自身が作品でもあるの」と書いていました。ヴァニラさんの中には、アーティストとしての「私」と、作品としての「私」が存在するようですが、ただ、それなら、「超整形美人」の中で自らの半生を振り返っている「私」って誰なのだろうと思いました。もしくは、「私はもう自分のことを人間だとは思っていない」というときの「自分」って何なのだろうとも。

 ヴァニラさんはもちろん戸籍上の名前(いわゆる本名)を持っています。が、“本名の私”、あるいは“ブスだったころの私”は、本当の姿ではなく、フランス人形の理想を体現した「ヴァニラ」こそが本当の姿といいます。ヴァニラさん自身は現在の顔は、本来の姿であるヴァニラの2パーセントしか実現しておらず、そういうからにはあと98パーセント分整形をするのだと思いますが、完成した「ヴァニラ」、もしくは整形によって完成に向けて努力をしている「ヴァニラ」こそが本当の姿であるとしても、「自分」のことをもう人間だとは思っていない「私」がそこにいるわけで、「私」は人間であるからこそ「自分」のことを人間だとは思っていないのではと思いました。「我、思う故に我あり」という言葉を引用するまでもなく、「自分」のことを人間だとは思っていないと思念する時点ですでに、「私」はまぎれもない人間だと思います。すると、その「私」って誰なのだろうと思いました。

 ヴァニラさんは、「何かひとつ、生きるうえでの目標や夢を持ってほしい」「これから生きていく未来にやりたいことがあれば、視線は下に下がらない。下を見ても、何もいいことはない。そこから、上にのぼっていくことだけを考えて」「私の場合は、それがカスタムだった」「でも、人によっては別のものかもしれない」「それでいいと思う」と言います。ヴァニラさんは、「美しくなる(本来の自分に戻る)」という目標があり、そのために一心不乱に掛けて抜けてきたのだと思います。目標や夢を持ち、それを実現させることを決意した人間のエネルギーはすごいなと思いました。逆にいえば、目標も、夢もない人間はやることがないからこそ他人の悪口を言うのかもしれませんし、わけのわからない問題や事件を起こすのかもしれません。ヴァニラさんは、整形以外にも、「夢はいっぱいある」と書きます。同時に、「ぜんぶを叶えるには、人生短すぎるね」とも。自分自身の目標を見つけた人間は、誰かをイジメたり、復習を考えたりなどしている暇はないのかもしれません。「自分のために時間を使い、生きてほしいと思う」と書くヴァニラさんのメッセージが心に響きました。


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