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中学生失格/てんちむ(橋本甜歌)のあらすじと読書感想文

2014年3月10日 竹内みちまろ 参照回数:

中学生失格/てんちむ(橋本甜歌)


 人気モデルで、女優としても活躍中の橋本甜歌さん(てんちむ)の「中学生失格」(2010年)を読みました。

 「中学生失格」は、甜歌さんが16歳のときに出版された本です。内容は、中学1年生だった3月から中学3年生の4月までの13ヶ月間の甜歌さんの日記を掲載し、亡くなったお父さんへの手紙や、16歳の甜歌さんが中学生だったころを振り返ったページなどが収録されている本です。

 まえがきで、16歳の甜歌さんは、「昔からの『てんかりん』ファンだったみんなはびっくりしたでしょう? この変わりように!」と綴っていました。しかし、清純派子役やジュニアアイドルとして活躍し、芸能界でのますますの活躍が期待された一方、私生活では、髪の毛を染め、鼻やおへそにピアスの穴を開け、ヤンキーファッションに身を包み、生活が崩れていったようです。16歳の甜歌さんは、「みんなの知っている、NHKでいい子していた、『てんかりん』じゃないんだもん」と、あっけらかんと書いていましたが、ただ、「読み終わった後に私のマネはしないで! 絶対に後で後悔するから!」とも。

 「中学生失格」はあらすじがあるような本ではありませんが、簡単な内容と感想をメモしておきたいと思います。(未読の人にはネタバレになる個所があります)

中学生失格のあらすじと感想(ネタバレ)


 「中学生失格」は、甜歌さんが出演していた「天才てれびくん」を卒業したばかりの2007年3月、甜歌さんが13歳の中学1年生の時に始まっていました。

 甜歌さんが通っていた中学校には、他の中学生の生徒と付き合ってはならないという校則がありました。しかし、甜歌さんは他校の生徒とつきあっていて1月には夜中に家を抜け出して近所の公園でキスをしました、それが甜歌さんのファーストキスとのこと。

 甜歌さんは、校則に違反して他行の生徒と付き合っていたことに心を痛め、学校の相談室に行きました。「絶対に喋らない」と約束したにも関わらず、翌日、甜歌さんの母親の文華さんが学校に呼ばれます。日記はその日から始まっていました。なお、甜歌さんの父親は甜歌さんが中学1年生の6月に亡くなり、甜歌さんには、甜歌さんが中学生になると同時に小学校に入学した弟がいました。

 「中学生失格」は、甜歌さんが中学3年生になった4月でいったん中断しています。その後、甜歌さんは、「悪いことはやめてギャルになろう」と決心したり、文華さんが奔走してやっと入月できた定時制の高校を2か月で退学するなど、悩み、もがいていたようです。

 日記を書き始めたころの甜歌さんは、既に有名人で、地元の花火大会に行けば「サインください」攻勢にあうほどの人気者でした。しかし、甜歌さんさんにとってはそのことが苦痛だったようで、「天才てれびくんMAX」の中でのキャラクターである「いい子」として見られることも嫌だったようです。仕事をやめたい、芸能界をやめたいと嘆く心の叫びが記され、「『芸能人』じゃなくて『不良』として見てほしい」などと記された個所もありました。

 「中学生失格」では、中学生だった甜歌さんの日記も心に響きましたが、出版時の16歳の甜歌さんが書き加えた、中学生当時を振り返った脚注も印象に残りました。

 脚注では、日記に登場する彼氏や友だちとの関係などを読者に説明するためのコメントもありますが、「いやーとにかく病んでいた。チャラい女がカッコイイと思っていたから、彼氏も次々と!! とか考えているのがみんなにバレて、一人孤立しちゃったんだよね! で、彼にも捨てられそうになってたし! ってか、私こん時まだ14歳だよ! 凄くね?? 早くね?? 何やってたんだろう!!」と自嘲気味に、楽しそうに書いていました。

 しかし、よく考えてみると、「私こん時まだ14歳だよ!」と振り返る甜歌さんも、実はまだ16歳なわけで、6歳のころに芸能界に飛び込んで、人気者となり、中学1年生の6月に大好きだったお父さんが亡くなり、心を病んで、生活も家庭も荒れて、地域やネットで非難・中傷を浴び、「このままではダメと気づき上京を決意」し、1人で家も探して、芸能界に復帰した甜歌さんは密度の濃い時間を過ごしたのだなと思いました。マルグリット・デュラスの自伝的小説「愛人/ラマン」ではありませんが、甜歌さんは、16歳で年老いて、大人になってしまったような印象すら受けました。16歳の甜歌さんは、小学5年生のときに水着グラビア(写真集)をやらされて、両親が反対せずに、むしろ賛成していたことに心を痛めている様子も記していました。

 甜歌さん自身、「これでもいっぱい悩み、いっぱいツライ思いをして16歳になったんだ」と書いていますが、中学生のころの日記を読み返した感想を、「読んでいるうちに涙が出てきた。ガキだけど、マジ必死に生きてた! そのことを思い出しました」と振り返っていました。「バカみたいな強がりさんが小さな社会で必死に生きていた中学時代を誇りに思っていると信じてます」との言葉から、甜歌さんは、後悔することも思い出したくことも多々あるのかもしれませんが、そういったことも含めて、自分自身を恥じてはいないのかもしれないと思いました。

 16歳の甜歌さんは、「ママ死ねって、思ってたし。あいつぶっ殺してやる! って思ってたし…。」と、「…」付きではありますが、短い言葉で冷静に振り返っていました。が、中学生だった甜歌さんは、「ママさえいなければ…って思うよネ」とつぶやくくらいで、日記の中では、母親の文華さんのことをあまり悪く書いていないように思えました。甜歌さんは、優しい人なのだなと思いました。

 「中学生失格」は、読み終えて、日記という特性もあり、行間に埋め込まれていることや、書かれないでいることのほうに、本当の思いがつまっているのかもしれないと感じます。日々降り積もる思いは言葉にして残しておかなければ消えて無くなってしまうこともありますが、すべての人が降り積もる思いをありのままに表現できる言葉を持っているわけではありません。

 大人になった甜歌さんは、きっと、すばらしい表現者になるのではないかと思いました。


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