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点と線/松本清張のあらすじと読書感想文(ネタバレ)

2012年9月15日 竹内みちまろ 参照回数:

 汚職事件の摘発が進行中の某省の課長補佐・佐山憲一(31)と、料理屋の「女中」お時(本名:桑山秀子)の死体が九州の海岸で発見されました。2人の死は、情死との見解が強まりますが、佐山の遺留品の中から、東京から九州方面へ向かう特急「あさかぜ」号の中で発行された「御一人様」の列車食堂のレシートが残っていたことに、地元警察のベテラン刑事・鳥飼重太郎が疑問を抱きました。警視庁捜査2課の警部補・三原紀一も現地を訪れ、捜査が進みます。実務に通じていた佐山は、汚職事件の鍵を握る人物であり、検察は佐山に確認したいことが大量にありました。また、佐山の死で“利益を得る”上司が複数いました。“利益を得る”人物の中に、汚職事件の中心にある某省の部長・石田芳男(50)がおり、捜査の線上に、某省に出入りする機会工具商・安田辰郎があがりました。

 佐山とお時の交友関係がどうしてもあがらず、三原は、2人が青酸カリを飲んだ前後の安田の足取りを追います。すると、2人が青酸カリを飲んだ翌日(死体が発見された当日)の夜に、安田が仕事で北海道の小樽に行き、そこで、取引先の業者と会っていました。東京から青森へ向かう特急電車や、北海道へ渡る青函連絡船でも、安田がいたことの証言や、乗車記録が残っています。2人が青酸カリを飲んだ夜に安田が九州にいることは物理的に不可能でした。旅客機を利用すれば、安田が業者に会う前に、九州から北海道まで行くことができますが、安田は乗っておらず、該当の便の乗客全員にあたり偽名などがないか裏付けをしましたが、乗客全員がその飛行機に乗っていたことが判明しました。捜査は難航します。

 ***

 結論を言えば、佐山は佐山に捜査が及ぶことを恐れた石田によって九州へ行くように命じらており、お時は安田の妻で肺結核に病む亮子の公認の安田の愛人で、九州の海岸には、佐山と安田、お時と亮子がいて、安田が佐山に青酸カリを飲ませ、亮子がお時に青酸カリを飲ませ、情死を装ったと推測されました。北海道行きのアリバイのトリックは、石田が部下や出入りの商社社員らに手をまわして、特急電車での証言や、旅客機に乗っていたという証言を用意したものでした。しかし、真相は、安田と亮子の青酸カリによる「情死」による闇の中へ葬り去られました。

 『点と線』は、安田や石田など、最初から怪しい人物が、抜け目なく振る舞っていましたので、そのずるがしこさがいっそう怪しかった印象がありました。結果は、印象のとおりだったのですが、一人だけ、安田の妻・亮子の存在が際立っていました。肺結核に治る見込みがなく、医者から、療養のため、夫との性行為は禁じられていました。白い顔をしていますが、妙に艶っぽく、本を読むのが好きで、知的で美しい女でした。公認の愛人・お時の面倒も見ていたようです。安田と亮子の「情死」は、合意の上の情死だったのか、亮子が安田に青酸カリを飲ませて自死の道連れにしたのかはわかりませんが、愛人の世話をする中で、何かをつのらせ、何かを燃やしていたのかもしれないと思いました。


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