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秘密/谷崎潤一郎のあらすじと読書感想文

2008年3月31日 竹内みちまろ 参照回数:


 「秘密」の内容をブロックに分けてご紹介します。

イ、主人公の男が、遊び仲間や周囲の雑音から逃れるために、東京のとある場所に部屋を借りて隠遁します。男は、まだ若いようですが、これといった職業についているわけではないようです。芝居や探偵小説に飽きてしまって、部屋を借りたお寺の住職にねだってもらいうけた地獄絵図を壁にかけていたりしていました。香を買ってきてくべたりするあたりは、几帳面で凝り性のようです。

ロ、古着屋の前を通りかかった時に、女ものの着物が目にとまりました。男は戦慄します。あの着物を身につけて、女の姿になって往来を歩いてみたい。さっそく買い求めました。大柄な女が着ていたもののようで、小柄な男にはぴったりです。男は、襦袢や羽織もそろえました。男は、鏡台の前に座って、顔におしろいを塗ります。女の姿に変身しました。おびえながら外に出ます。最初は、夜道で巡査とすれ違うだけでびくびくしていました。そのうちに、女の格好のままで、酒場に入ったり、劇場の貴賓席に紛れ込むようになりました。

ハ、男は、貴賓席で、とあるカップルと隣あわせになります。女のほうに見覚えがありました。昔、外国に向かう船の中で知り合って、船が着いた後に捨ててしまった女でした。女のかっこうをした男は、興奮します。女の衣服の中に、手紙を忍ばせました。部屋に帰ると男の衣服の中にも、女からの手紙が入っていました。女は、場所を指定して男を呼び出します。男は、目隠しをされて、人力車に乗せられます。車は、女の居場所を悟られないように、あちらこちらをぐるぐると回った後に、女の家に到着します。部屋の中でようやくに目隠しをはずされました。そんなあいびきが繰り返されます。

ニ、ある時に、男は、車の中で女に目隠しをはずしてくれと頼みました。男は、一瞬だけ、周りの様子を見ました。聡い男は、その風景と、車の順路を手がかりにして女の居場所を突き止めてしまいました。さびれた界隈の奥にある裕福な未亡人の家に近付くと、女が窓から男を見ていました。女はにこりともせずに、悔いとあきらめを浮かべて男を見つめます。静かに窓を閉めました。夜に見る女とは別人でした。男は、それっきり、女を捨てます。

ホ、最後のブロックは全文を引用します。

「二三日過ぎてから、急に私は寺を引き払って田端の方へ移転した。私の心はだんだん「秘密」などと云う手ぬるい淡い快感に満足しなくなって、もっと色彩の濃い、血だらけな快楽を求めるように傾いて行った」

 「イ」や「ロ」のブロックを利用して、主人公のキャラクターをしっかりと説明され、「ハ」では、クライマックスである「ニ」に向かう経緯が描かれています。併せて、男と女の背景も浮き彫りにされています。そして、最後のブロックである「ホ」は、小説の中では語られることのない奥行きを生み出していました。語らずにそこに新たな物語が存在することを提示して小説を終わらせる方法もあるのだなと感じました。


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