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杜子春/芥川龍之介のあらすじと読書感想文

2011年2月11日 竹内みちまろ 参照回数:

杜子春/芥川龍之介のあらすじ


 杜子春の舞台は唐の都・洛陽です。若者は名を杜子春といいます。杜子春は、もとはお金持ちでしたが一文無しになり、西の門の下でぼんやりと空を見上げています。すると、老人が現れて、影の頭の場所を夜中に掘れば黄金が出てくる、と告げます。杜子春は、一夜にして大金持ちになりました。それまでは見向きもしなかった人たちがこぞって杜子春の屋敷に訪れます。杜子春は贅沢三昧をします。しかし、三年たって一文無しになってしまいました。杜子春はまた西の門の下で空を眺めます。同じように老人のおつげで、胸の場所を掘り、大金持ちになりました。同じように贅沢をして、同じように一文無しに戻ります。再び、西の門の下で老人に会いました。

 杜子春に使われている小説技法という点でいうと「三度の繰り返し」があります。なぜ三回なのかは説明できないのですが、三位一体ではありませんが、三という数字が、人間や自然やこの世の事象や現象では不思議な力を持っているのかもしれません。

 西の門の場面の「三度の繰り返し」では、(1)頭の場所を掘って黄金が出る→(2)胸の場所を掘って黄金が出る→(3)腹の場所を掘れば黄金が出ると言われますが、「お金はもういらないのです」と告げるという形になります。ホップ、ステップ、ジャンプではありませんが、三回目にひねりを加えて、ストーリーを展開させる技法です。

 お金はいらないと告げた杜子春は、老人に、弟子にしてくれと頼みます。老人は、仙人でした。杜子春の弟子入りを許可します。

 杜子春と仙人は、山に登りました。仙人は「西王母」に会ってくると言って出かけてしまいます。魔性が現れてたぶらかそうとするだろうが絶対に口をきくな、と言い置きます。ここでまた、「三度の繰り返し」が始まります。今回も、三回目にひねりを加えるホップ、ステップ、ジャンプ方式です。

 (1)虎と白蛇が杜子春をたぶらかすが黙っていると消えてしまう→(2)火柱が襲いかかってくるが黙っていると消えてしまう→(3)神将が現れて黙っていたら突き殺されてしまいました。突き殺された杜子春の体から魂が抜け出して地獄へ行くことでストーリーは展開します。また、神将もどうせ消えてしまうんだろとえらそうにたかをくくっていた読者の裏をかくという技法も使われています。

 それはさておき、魂となった杜子春は地獄へ行きます。閻魔大王から問いかけられて、杜子春は答えようとしますが、ふと「口をきくな」という仙人の言葉を思い出し口を閉ざします。杜子春は地獄のありとあらゆる責め苦に遭いますがそれでも口を開きません。閻魔大王は、杜子春の死んだ両親を畜生道から引きつれてきます。父母を責めます。杜子春は目をつぶって耐えていました。ふと、「心配をおしでない。私たちはどうなっても、お前さえ仕合せになれるのなら、それより結構なことはないのだからね。大王が何と仰っても、言いたくないことは黙って御出で」という母の声が聞こえます。杜子春が目を開けると、母が悲しそうに杜子春を見つめていました。地の文で、「大金持ちになれば御世辞を言い、貧乏人になれば口も利かない世間の人たちに比べると、何という有難い志でしょう」と説明されます。杜子春が、「お母さん」と叫ぶと、夕日を浴びていた西の門の場面に戻ります。どうやら、弟子入りを志願した場面のようです。「夢おち」と考えると「魔術」のストーリー展開に近いかもしれません。最後は、めでたし、めでたし。

 お父さんはどうなったのという疑問が沸きますがそれはさておき、杜子春の全体を見渡しても、「三度の繰り返し」があります。(1)西の門→(2)仙人の山→(3)地獄です。そして、また「西の門」に戻るというひねりが加えられています。

杜子春/芥川龍之介の読書感想文


 杜子春は、ストーリーテラーとしての芥川龍之介の技術がいかんなく発揮された作品だと思います。内容については、絵に描いたような話ですので、ケチはつけないことにします。率直な、といいますか、勝手な感想としましては、地の文で、「大金持ちになれば御世辞を言い、貧乏人になれば口も利かない世間の人たちに比べると、何という有難い志でしょう」などと説明しちゃっていて、母の愛を強調し、二宮尊徳的な美徳を称えるような話にしていますので、芥川龍之介は、どこか、無理をして書いたような様子が伝わってくるという感じでした。


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