【地下アイドル】姫乃たまは、AKB48じゃんけん大会で渡辺美優紀の安堵の笑顔に何を見た?

2014年9月18日 19時29分  参照回数:-



【地下アイドル】姫乃たまは、AKB48じゃんけん大会で渡辺美優紀の安堵の笑顔に何を見た?

優勝を決めた瞬間の渡辺美優紀 (C)AKS


 恒例行事となったAKB48の「じゃんけん大会」。2014年は、人気メンバーの渡辺美優紀(NMB48チームB2/SKE48チームS)が優勝し、ソロデビューを勝ち取った。じゃんけん大会はメディアでも脚光を浴び、じゃんけん大会の様子が全国の映画館に生配信されるなど、国民的行事の様相を呈してさえきている。そんなAKB48を地上の光の代名詞とするならば、スポットライトを浴びることのない場所で活動を続ける地下アイドルたちがいる。そんな地下アイドルたちの目には、「じゃんけん大会」はどう映ったのか。現役の地下アイドル・姫乃たまからレポートが届いたので、ご紹介したい。(編集部)



 AKB48は、「会いに行けるアイドル」のコンセプト通り、従来のアイドルよりも現実的な夢を見させてくれます。“クラスで三番目に可愛い女の子”と表現されるメンバーたちの、手が届きそうな感じは、男性ファンのみならず、多くの少女たちに、私もアイドルになれるかもという夢を与えます。AKB48とは夢を与える団体なのです。そして、それは所属しているメンバーにとっても変わりありません。

 2014年9月16日、「じゃんけん大会2014〜こぶしで勝ち取れ!1/300ソロデビュー争奪戦〜」が日本武道館で開催されました。今年で5回目、もはや説明不要のAKB48グループ恒例イベントです。今年は優勝者特典がセンターからソロデビューに変更され、出場者も112名と過去最高人数になりました。

 舞台上には念願のソロデビューをかけて、レフリーの前で拳を突き合わせるメンバー。なかなかマスメディアに登場できない推しメン(応援しているメンバーのこと)のチャンスを願って、ペンライトを握るファンの拳にも汗がにじみます。

 と、なんだか格好つけて書いちゃいましたが、ちょっと冷静になってください。ただのじゃんけんですよ? 大の大人が日本武道館いっぱいに寄って集まって、3時間半も固唾をのんで見守っているのが、じゃんけんですよ。アイドルってすごいなあ。

 きっと少し前の私なら、このまま冷めた目で見ていましたが、今年はちょっと違います。先日、初めてAKB48の公演に足を運び、グループに所属しても日の目を見れないメンバーが多く存在することを知ったのです。

 その公演は東京ドームで行われ、出演者が300人もいました。比較的、舞台に近い席でしたが、舞台上のメンバーの顔はほとんど見えません。大画面に映し出されるのはマスメディアで頻繁に見かける有名なメンバーばかりです。

 多くの子が画面に映らないのは当たり前で、ひどい時はライトすら当たらない暗がりから、必死に客席に手を振ってアピールしています。MCで「売れたい」とはっきり口にした子もいました。私は見たことがないメンバーでした。しかし、MCをさせてもらえるだけまだマシ、というものです。あの公演でマイクすら握らせてもらえない子が何人いたでしょう。

 少し考えればわかるはずのこの状況を、実際に目の当たりにするまで理解できなかったのは、地下アイドルである私にとってAKB48がとても大きな存在だからです。AKB48がブレイクして、近年のアイドルブームが再燃するまで、地下アイドルは活動の中心であるはずのライブハウスを借りることすらままなりませんでした。

 私が活動を始めた5年ほど前はアイドルがようやく市民権を得て、ライブハウスも借りやすくなっていましたが、アイドルというだけで嫌な顔をするライブハウスの関係者はたくさんいたように思います。

 AKB48に所属しているというだけで、誰もが売れているという感覚がどこかにあったのです。しかし、地下で細々と活動している私は、暗がりから手を振っているメンバーに共感せずにいられませんでした。と、言っても、やはり彼女たちと私とでは大きな差があるんですけどね……。

 AKB48に所属することもまたゴールではないのです。暗がりからどのように上りつめるかは人それぞれですが、みるきーこと渡辺美優紀は今大会で、念願のソロデビューを勝ち取りました。トロフィーを抱えて笑顔で目に涙を浮かべる彼女は、すぐに独り占めしていたスポットライトから外されました。

 じゃんけんという名の運によって勝ち取った夢見心地の時間は、唐突に始まった次のシングルに参加できる選抜メンバーの発表であっという間に終了したのです。

 さっきまでじゃんけんで負けていた他のメンバーが、運営によって名前を呼ばれ、歓喜の声をあげて、時に涙し、さっきまで渡辺が独り占めしていたスポットライトを次々と奪ってゆきます。暗がりに立ち尽くした彼女の後姿をなんと言ったらよいのでしょう。ソロデビューもまた、ゴールではなかったのです。

 AKB48は卒業するためのグループです。過去に卒業したメンバーも多くは女優や、ソロシンガーなど別々の道をひとりで歩んでいます。これはAKB48のみならず、多くのアイドルも同じで、アイドルとは途中経過であり、最終目標ではないのです。

 じゃんけん大会の大きな特徴は、衣装と登場の仕方が自由なところでしょう。普段は全員同じ衣装で画一化されているメンバーが、自己プロデュース能力を見せる貴重な場でもあるのです。個人をアピールしてAKB48の中で上りつめるため、ひいては卒業後の自分の進路を提示する機会でもあるのです。

 112名のメンバーが思い思いの個性的な衣装で並んでいるのを見て、衝撃を受けました。私が普段見ている地下アイドルと全く同じだったのです。多くの地下アイドルはプロデューサーが存在せず、自分の意思によって活動しています。私はその個性的で危ういところに、面白さを感じているのですが、じゃんけん大会での112名はまさに、地下アイドルのそれでした。ちぐはぐで、全体にまとまりがなく、楽しんでいる感じ(褒めています)!

 トロフィーを抱えたまま、暗がりで立ち尽くしていた渡辺も選抜メンバーとして名前を呼ばれ、安堵の笑顔でスポットライトの中へ駆けていきました。アイドルとは途中段階であり、無限の可能性を秘めた存在です。じゃんけん大会はその事実を再認識できる場でした。(文=姫乃たま)

【著者紹介:姫乃たま】

姫乃たま:1993/2/12下北沢生まれ。地下アイドル界の隙間産業として、都内でのライブ活動を中心にライター、司会、モデルとして活動中。器用貧乏。


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