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GO/金城一紀のあらすじと読書感想文(ネタバレ)

2019年7月17日 16時30分 参照回数:

GO/金城一紀のあらすじと読書感想文

 在日韓国人の杉原は、日本の普通高校に通っている男子高校生。杉原は、朝鮮籍を持つ両親の元に生まれたため、在日朝鮮人として日本で生まれ、日本で育った。しかし、杉原が中学3年生の時、両親が突然ハワイに行きたいと言い出し、そのために両親は国籍を韓国に変更した。

 その時、杉原は父親から、国籍を変えるかどうかの選択を迫られた。父親から、どちらの国籍を選んでも良いが広い世界を見ろと教えられていた杉原は、韓国籍を選択した。杉原は中学までは朝鮮学校に通っていたが、国籍を変更すると同時に、高校からは日本の学校に進学することに決めた。

 杉原の父親は元プロボクサーだった。幼少期からひねくれた悪ガキであった杉原は、父親の教育としてボクシングを叩きこまれていた。朝鮮学校時代から、悪友たちと喧嘩や悪さを繰り返し、警察にも、父親にも怒られる日々であったが、楽しく過ごしていた。学校には真面目に通わず、勉強もほとんどしていなかった杉原は、「民族学校開校以来のばか」と言われ、「クルパー」というあだ名をつけられていた。そんな杉原が日本の学校に進学するというのは、朝鮮学校では大きな事件であった。周りの教師は杉原のことを「民族反逆者」と呼び、中学卒業までの期間、教師たちからひどいいじめを受け続けた。杉原は、それでも黙々と勉強し、日本の学校に合格した。

 高校に進学しても、杉原は1人であった。杉原自身は自分が在日韓国人であることをひけらかすつもりもなかったが、朝鮮学校から来た奴がいるというのは不良たちの間ですぐに噂となった。朝鮮学校に対して偏った凶暴なイメージを持っている不良たちは、毎日のように「挑戦者」として杉原に喧嘩をしかけてきた。そうした「挑戦者」を一蹴しているうちに、喧嘩に明け暮れた日々を過ごし、3年経っても杉原はろくに友達もいなかった。

 唯一、杉原に友好的に接してくれるのは加藤という同級生で、加藤は杉原の「挑戦者」第一号であった。加藤はヤクザの息子で、杉原との喧嘩で鼻を折られた。杉原はヤクザの父親からの復讐を恐れていたが、加藤は折れた鼻を整形手術で綺麗な鼻にしてもらい、加藤からも、加藤の父親からも「男前にしてもらった」と逆に感謝された。その一件以降、加藤だけは杉原を気に入って話しかけてくれる存在となっていた。

 ある日、杉原は加藤の誕生日パーティーに招待される。そこで杉原は桜井という風変わりな女の子に話しかけられる。杉原も不思議な魅力のある桜井に出会った瞬間から惹かれるものがあった。2人はパーティーを抜けだし、夜の小学校へと歩いた。桜井は小学校の鉄門を飛び越え、杉原も後に続いた。夜の校庭で色々な会話をした2人は互いに惹かれ合うのを感じたが、その日はそのまま帰ることにした。杉原が先に鉄門を飛び越えたとき、「前も、飛んでたよね」と言い、鉄門ごしに2人はキスをした。

 それ以降、杉原は休日のほとんどを桜井との時間に費やすようになった。2人はお互いに、本や、映画や、CDなど互いにかっこいい思ったものを勧め合い、また2人で新しくかっこいいものを探しにいった。

 何度目かのデートの日、桜井は杉原を家に招き家族に紹介した。桜井の父親は東大を出ており、桜井の家庭は高級住宅地にった。杉原の通っていた高校の偏差値はとても低かったが、本をよく読んでいたため、豊富な知識を持っていた。桜井の家族は杉原を気に入り、それ以降2人は桜井の家で会うようになった。

 そんな時、杉原の朝鮮学校時代の友人である正一(ジョンイル)が、日本人高校生に刺されて亡くなってしまう。正一は杉原が日本の高校を受験すると宣言し、周囲から冷たく扱われていた時に、味方になってくれた人物だった。正一は朝鮮学校で「開校以来の秀才」と呼ばれるくらい成績がよく、杉原とは性格も見た目も正反対で、喧嘩もしたことがない人間だった。しかし、日本の学校に進学してからは朝鮮学校時代の悪友たちとは疎遠になってしまった杉原は唯一、正一とだけは長く交友関係が続いており、桜井との時間と同じくらい正一と会う時間も大切にしていた。

 正一を刺した日本人高校生は、毎日電車の中で見かける在日朝鮮人の美しい女の子に恋をしていた。彼の友人たちは、在日朝鮮人を好きになった彼を挑発するようにけしかけ、彼はその子に声をかけた。見知らぬ男子高校生に声をかけられた、女の子は身構えておびえた。過去に女の子は、知らない男性に殴られた経験を持っていた。彼女が助けを求めていると、正一がホームから颯爽と現れ彼女の前に立ちはだかった。男子高校生は、在日朝鮮人の男が急に目の前に現れ怖くなり、咄嗟に胸ポケットにしまっていたナイフを取り出し、正一に向かって刺した。血を流し倒れる正一を抱きながら女の子は助けを呼び続けたが、周りで見ていた人たちはそのまま電車に乗っていってしまったという。正一はそのまま大量出血で亡くなってしまった。

 杉原は親友を失いショックだったが、そのことを桜井にすぐには相談できなかった。正一の告別式には、朝鮮学校の友人も多く参列していた。久しぶりの再会にお互い気まずい思いを持ちながらも挨拶をすると、かつての悪友である元秀(ウォンス)を筆頭に仲間たちは、正一の敵討ちに向かおうと杉原に声をかけた。しかし、杉原はその話に乗らなかった。杉原の態度を見て元秀は怒り、「もう二度と話しかけるな」と言って去っていった。一人になった杉原は声を出さないように泣いた。朝鮮学校では昔から、人前で涙を流してはいけないと教育されていた。

 正一ともう二度と会えないというショックから立ち直れない杉原は、桜井に会いにいった。桜井は杉原の話を聞き、杉原の力になりたいと思った。桜井は杉原に朝まで一緒にいようと言い、2人はホテルにむかった。杉原は正一の死のことを話し、そして、気持ちを軽くしてくれた桜井に、自分が在日韓国人であることを告白した。

 桜井は突然、拒絶反応を示した。桜井は両親から、在日韓国人の男性とは付き合ってはいけないと教育されていたのだった。杉原は桜井の態度を見てそのままホテルを出た。それ以降は桜井と会うことはなく、2人が出会う前の日々に戻った。

 ある日、杉原は居酒屋で酔っぱらってしまった父親を迎えにいくことになった。帰り道に、父親から、朝鮮にいる父親の弟で、杉原にとっては叔父である人物が亡くなったと聞かされる。杉原の家族が韓国籍に変えたことによって、朝鮮にいる弟とは会えなくなってしまった。

 同じ陸地に住んでいるのに、朝鮮人だから、韓国人だから、日本人だから、在日だからと分けられるこの世に杉原はいつだって苛立ちを抱えていた。

 杉原は、父親の話を聞き終わった後、その父親に喧嘩を売った。父親は手加減をせずに杉原をボコボコにした。杉原は殴られながら父親の大きさを感じ、頭の中で父親が国籍を変えたのは自分のためであることを理解した。息子の足かせを一つでも取り除いてあげたいという親心であった。杉原と父親は笑いながら2人で家に帰った。

 その年のクリスマスイブ、杉原の元に桜井から突然、電話がかかってくる。桜井は、2人が出会った日に行った小学校に杉原を呼び出した。2人は久しぶりに顔を合わせた。

 杉原と別れてから、桜井なりに色々と勉強して考えたという。そして、桜井は、実はパーティーで杉原と出会う前から杉原のことを知っていたと話す。桜井の高校でたまたまバスケの試合があり、そこで試合に出ていた杉原が試合中に相手に向かってドロップキックをしたところを見た。桜井は杉原から目が離せなくなり、ジッと見ていると杉原と目が合い睨まれた。桜井はその目が忘れられずに、杉原と同じ高校である加藤の誕生日パーティーに、杉原を探すために参加したのだった。そして桜井は、杉原の国籍がどこであろうと関係ないと告げ、杉原を抱きしめた。杉原は話を聞いて、涙を流した。桜井から泣いていることを指摘され、「嘘つけよ。俺は人前では泣けない男なんだ」と呟いた。


GO/金城一紀の読書感想文

 この作品は、主人公である在日韓国人の杉原を中心に、国籍が違う人達への差別や偏見、国の制度や国同士の関係に苦しむ人々など、読んでいて考えさせられる作品です。ただ、テーマ性がある物語ではありますが、あくまで青春小説という点が重きにあるので、一人の思春期の男の子の葛藤が生き生きと描かれているため、爽やかな気持ちで読み進めることができます。むしろ、そういった思春期の恋や友情の悩みが含まれているからこそ、国籍が違うという点など関係なく、同じようにみんな悩んで生きているということをリアルに感じられると思います。

 杉原が恋に落ちる桜井という女の子が不思議な魅力を持っていて、2人が交際し始めてからの杉原と桜井のやりとりは、青春の甘酸っぱさを感じられます。価値観の似た2人が惹かれ合って、互いに尊重しお互いを好き合っているからこそ、そこに国籍という線が見えてしまった時が余計に苦しい気持ちになりました。杉原が在日韓国人だと知ったとき桜井は拒絶してしまいますが、桜井という人間が悪いということではなく、長く根付いた偏見や差別が形となって表れた結果だと感じました。その積み重ねが、正一の死にもつながっているのだとも感じました。

 杉原や、杉原の父親が、差別や偏見の世に生きながらも、狭い世界から抜け出して広い世界を見ようとしている姿は、とても考えさせられるものがありました。何より、人間として大きくて、カッコよく思えました。もがきながらも、自分を大切に、まっすぐ強く生きている人間はこんなにも輝かしく誇り高く見えるのだ、と憧れを感じました。作品の中で、在日韓国人や在日朝鮮人への日本人の偏見や差別のシーンがあり、読んでいる途中は同じ日本人として心苦しく恥ずべき気持ちにもなりました。しかし、読了後には日本人だから恥ずかしいという考え方ではなく、相手の国籍などではなく、一人の人間として周囲の人と向き合いたいなと前向きな気持ちなりました。生きていく上での、まっすぐさや力強さをもらえる作品だと思います。(まる)


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