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【ゲネプロレポート】ひとときの舞台『チャーリー』が開幕、「環境×演劇」プロジェクトの作品で人間と自然の共存について問いかける

2024年9月12日



(C) 2024 ひとときの舞台『チャーリー』(カメラマン:平賀正明)

 ひとときの舞台『チャーリー』が2024年9月12日から9月16日まで、東京・銀座 博品館劇場にて上演中。

 同作は、林業からSDGs、環境について考える作品製作を目指し始動した「環境×演劇」プロジェクトで、持続可能な未来を共創する舞台劇として、子供たちの力で世界を変える冒険と希望の物語を描き、人間は自然の敵なのか仲間なのか、人間と自然の共存について問いかける。

 主演・カイ役にダンスボーカルユニット「CUBERS」(キューバーズ)の活動を経て、舞台『ぼくらの七日間戦争 2022』など舞台を中心に活躍している一之瀬優(いちのせ・ゆう)、ヒロイン・ミラ役には、ミュージカル『薄桜鬼 志譚』雪村千鶴役ほか2.5次元舞台で活躍中の本西彩希帆(もとにし・さきほ)が出演。そしてリリ役にはバラエティ番組やドラマ、舞台など挑戦を続ける鈴木夢(すずき・ゆめ)、さらに歌舞伎俳優として活躍の傍ら多くのドラマや映画など話題作に出演する尾上松也(おのえ・まつや)が木の精霊・チャーリー役を声の出演でを演じる。

【STORY】

 環境破壊と戦争が広がる中、人類は自然とのつながりを忘れつつある。そんな中、天より遣わされたイチョウの木の精霊チャーリーは人々に多くの贈り物を与え、人間社会の発展を助けてきた。

 しかし、人々はその恵みを自己利益のために奪い合い、結果として地球の環境を破壊してきた。

 老いたチャーリーは、その様子を見て嘆き、人間には期待できないのか……と諦めの気持ちを抱き始めていた。

 そんな時、彼の前に人間の幼い女の子が捨てられていた。チャーリーは彼女を放っておけず、守り育てることにした。

 12日には初回公演の前にゲネプロが開催された。

 作品は、戦乱から森に逃げ込んだ若い夫婦が“親子が3人とも殺されるか”、”夫婦だけでも生き延びるか”の選択を迫られ、「誰かが見つけてくれるかもしれない」という希望を胸に幼い女の子を木のたもとに置き去りにして逃げ去る場面から始まった。

 木の精霊や森の動植物たちに育てられたミラは町の人に発見され施設に保護されるが、学校よりも森で過ごすことの方が多い。そんなミラを、大企業の御曹司のカイが気に掛ける。

 ミラやカイが住む島国「シルワ」は急速に産業化した過去を持ち、ジェット飛行機、動画撮影機能付きのスマートフォン、センサー付きの防犯システムなども存在する世界。報道番組もありSNSもあるにはあるようだが、しかしそれらに触れることができるのはカイなどごく一部の人々だけのようだ。そんな中、大企業群がエネルギー資源として「奇跡の石」に注目し、森を伐採し採掘を始めた。自然と繋がることができるミラが異変を感じることでストーリーは展開する。

 険しく貧しい山岳地帯に囲まれた「ルゴア共和国」と、「ルゴア共和国」と領地を接する豊かな「サクライン」の間の緊張が高まり、ミラやカイたちはそこに巻き込まれていくが、「ルゴア共和国」や「サクライン」の指導者たちも登場しそれぞれの背景も語られるため、観客は同作をファンタジーとして傍観するよりも、人間世界の現実を切り取った物語として、自身や自身が住む国、そして様々な経験をしたうえで成り立っている現実社会というものを感じ、考えさせられるかもしれない。また、未来を託される子どもたちがやがて大人になり未来を託す側になっていく姿を描くところにメッセージ性を感じる観客もいるかもしれない。

 一之瀬と本西をはじめとする俳優たちの熱量も高く、ゲネプロを終えて本公演に突入すれば作品はさらに熱を帯びていくだろう。新しく始動したプロジェクトとのことだが、芝居だけで魅せる120分はあっという間で、深い後味の残る作品に触れてみたいという方にも、ぜひ劇場に足を運んでみたらとお勧めしたい。


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