本文へスキップ

ミニシアター通信本&映画 > ジキル博士とハイド氏

書評「ジキル博士とハイド氏」あらすじ&解説

2017年11月21日 23時10分 参照回数:

 1886年に出版された「ジキル博士とハイド氏」は、誰もがその名を聞いたことがあるであろう名作である。現代においても多くの作品に影響を与え続ける本書を知っているけど読んだことがないという方も多いのではないだろうか。実は私もその一人だった。2017年に新訳とした登場したのをきっかけに手に取る機会が巡ってきたため、僭越ながら、紹介させていただこうと思う。

「ジキル博士とハイド氏」ロバート・L・スティーヴンソン著/田内志文訳のあらすじ

 ロンドンで弁護士業を営むジョン・アタスンは、友人で高名な紳士であるヘンリー・ジキル博士から奇妙な遺言状を預かっていた。そこに記された謎の人物エドワード・ハイドの正体を突き止めようとするアタスンの前に不可解な殺人事件が発生。その犯人は、この世のものとは思えない奇形の者で、狂気的な犯行に及んだのだ。

 事件とハイドの存在を結びつけたアタスンだったが、友人のジキルにより、真相に近づくことを止められてしまう。善心のジキルと罪深きハイド・・・2つの人格を手にした男の運命とは・・・?

実はジキルもハイドも主人公ではない

 本書を読んでいて、まず驚かされたのが、物語の主人公となるのが、ジキル博士ではなく、弁護士のアタスンだということ。

 てっきりジキル博士がハイド氏という新たな人格に苛まれる過程を描く作品なのかと思っていたが、むしろジキルとハイドという存在は物語の中では覆い隠される存在で、謎として描かれている。

 さながら推理小説を読み進めるかのごとく物語を追体験していったものだ。

 1800年代に刊行されたゴシック小説ということで、’’切り裂きジャック’’や’’吸血鬼ドラキュラ’’などが登場しそうな当時のロンドンの街並みや人間たちの生活スタイルが克明に描かれており、現実とはかけ離れた様相が繰り広げられる。

 この時代に書かれた物語には、どこか薄気味悪さというか、淀んだ世界観が広がっており、なんの突拍子もなく、殺人鬼や怪人が現れてもおかしくない雰囲気を醸し出す文章が綴られているのだが、本作ももちろん例外でなく、奇形の怪人ハイドという人物をおどろおどろしい筆舌で語り尽くしており、読者を震撼させる。

 前半の物語で覆い隠したジキルとハイドの素性を後半のジキルとその友人ラニヨンの手記という形で明確にしているのも秀逸で、一冊で3つの視点から3度の楽しみがあるというのも、また面白く感じた次第である。

映像化が意外と難しい一冊

 本書は二重人格ものの代名詞としても知られ、現代の怪奇作品にも多大な影響をもたらしたことでも知られる名作だ。

 人間の内なる善意と悪意を具現化し、欲望を体現するかのようなストーリーには、知的好奇心をくすぐられ、次から次へと創作意欲がとめどなく湧いてくる。

 舞台劇としては数々の名優により演じられてきた作品だが、実は映画やドラマといった映像作品としてはそこまで頻繁に映像化されているわけではない。恐らく、このダークで怪奇的で、独特な雰囲気を醸し出す文章を映像化するのは難しいのであろう。

 だが実は、現在、ハリウッドでは映画化の動きがすでに見受けられており、2017年に公開されたトム・クルーズ主演「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」にも、ヘンリー・ジキル博士=エドワード・ハイドが登場しているのだ。

 ユニバーサル・スタジオの元で進行中のこの’’ダーク・ユニバース’’と呼ばれる作品群では、名優ラッセル・クロウが同役を演じている。なので、ラッセル・クロウが演じているように想像しながら、他の登場人物たちをハリウッドの俳優たちで勝手にキャスティングしていくのも楽しみの一つと言える。

 湿った空気の流れる1800年代のロンドンを舞台に巻き起こる奇怪な事件の数々。ただの恐怖小説でなく、人間の性とでも言うべき感情を身の毛もよだつ描写で描いた名作だ。


【この記事の著者紹介】
Sunset Boulevard(書評&映画評ライター):
 映画を観ることと本を読むことが大好きな、しがないライター。オススメ小説の書評や読書感想文を通じて、本を読む楽しさを伝えられたら嬉しいです。また幼き日よりハリウッド映画に親しんできたため、知識に関しては確固たる自信があり、誰よりも詳しく深い評論が書けるように日々努力を重ねています。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。Twitter:https://twitter.com/sunsetblvdmovie


【Sunset Boulevardの記事】

書評「ハリー・ポッターと呪いの子」:あらすじ&ハリー・ポッターシリーズのおさらい


書評「オズの魔法使い」


書評「侍女の物語」|ハリウッドでドラマ化の衝撃作…あらすじ&感想


ミニシアター通信(TOP)








運営者

株式会社ミニシアター通信

〒144-0035
東京都大田区南蒲田2-14-16-202
TEL.03-5710-1903
FAX.03-4496-4960
→詳細(問い合わせ) 





ミニシアター通信(TOP)