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モモ/ミヒャエル・エンデのあらすじと読書感想文

2017年11月6日 16時40分 参照回数:

モモ/ミヒャエル・エンデのあらすじ(大島かおり訳・岩波少年文庫)

 かつて栄えた大都市のはずれ、ほとんど忘れ去られた円形劇場あとに、モモという、身寄りのない女の子が住み着きました。

 モモには人の話を聞く才能がありました。どんな悩みを抱えた人も、モモの前では何でも話してしまい、話すうち、いつの間にか自分で解決策を見つけ出してしまうのです。そんなモモのところには、毎日人々が集まり、モモにはたくさんの友だちができました。

 ある時、街に灰色の男たちがやってきました。時間貯蓄銀行の外交員を名乗る彼らは、灰色の服を着て灰色の葉巻をくゆらし、なぜか、近づくとひどい寒気がするのでした。

 灰色の男たちは、人々に、彼らがどれだけの時間を無駄にして生きているかを計算して見せ、余分な時間を時間貯蓄銀行に預ければ、膨大な利子がついて返ってくると説明しました。人々は納得し、時間を節約するためせかせかと働くようになりました。お金を手に入れ、仕事で成功していきましたが、心に余裕を失い、時間がないのでモモのところに来なくなりました。モモは異変に気付き、友達をひとりひとり訪ね歩きました。

 困ったのは灰色の男たちです。ある日、ひとりの外交員がモモのところにもやってきました。彼は、人の話を引き出してしまう不思議なモモの前で、「自分たちは人間から奪った時間で命をつないでいる。人間に時間は戻らない」と、つい真実を話してしまいます。

 人々に知らせようと騒ぎを起こし、灰色の男たちに目をつけられたモモのもとに、ふいに、いっぴきのカメが現れました。カメの甲羅には「ツイテオイデ」と光る文字が浮かびました。

 カメの後をついてゆくと、都会の真ん中で光る異次元の空間に迷い込み、「どこにもない家」という標札のある家にたどり着きました。ドアをくぐった先、見たこともないほど大きな広間では、ありとあらゆる時計が時を刻んでいました。その場所でモモは銀髪の老人と出会います。それは時間を司るマイスター・ホラでした。灰色の男たちから守るため、不思議なカメ、カシオペイアを遣わしモモを呼んだのも彼でした。ホラはいつもこの家から、外の世界が見える眼鏡で人々の様子を見ていたのです。

 ホラは、モモを「時間のみなもと」へ連れて行きました。その場所で、モモは「今」という瞬間にひとときだけ咲いては散ることを繰り返す、これまで見た中で一番美しい花々を見ました。それは、モモの心の中にある、モモにとっての時間でした。ホラの家のソファーで眠ったモモが目を覚ますと、円形劇場あとに戻っていました。

 モモのその1日は、現実世界では1年という月日でした。モモは友達を探し歩き、すっかり変わってしまった街や人々に出会いました。街は都会化し、効率良く動くようになっていましたが、人々は常にイライラしていました。行方がわからなくなった友達もいました。

 そこへ灰色の男が現れ、取引をもちかけます。「自分たちは、時間を司るマイスター・ホラが持っている、人類全体の時間がほしい。ホラのもとへ案内すれば、行方不明の友だちを返してやるし、モモたちには今後も手を出さない」という条件でした。モモは申し出を拒みました。そもそも、はぐれてしまったカシオペイアの案内がなければ、ホラのところへは行けません。そう伝えると、男たちはカシオペイアを探し始めました。

 モモがひとり取り残されると、足元に当たったものがありました。それはカシオペイアでした。ふたりは再びマイスター・ホラの家に向かいましたが、灰色の男たちが後をつけており、家は取り囲まれてしまいます。

 ホラは、モモにある提案をしました。それは自分が眠ることで、時間を止めるというものでした。そうすれば、人々から時間を奪って生きている灰色の男たちは消えてしまいます。しかし彼らは時間貯蔵庫に時間を貯めているので、すぐには消えません。ホラは、モモに「1時間を与えるから、貯蔵庫の場所を探し扉を閉め、時間の補給を止めて、男たちがすべて消えたら再び扉を開けるように」と言い、1時間分の「時間の花」をモモに渡して、眠りにつきました。

 ホラが眠ると、男たちは時が止まったことに気づき、慌て始めました。彼らは互いの葉巻を奪い合い、我先にと時間貯蔵庫に向かいました。モモはその後をつけました。貯蔵庫の前で、男たちが最後の3人になった時、モモはこっそり貯蔵庫に近づき、時間の花で時を動かして扉を閉めました。気づいた男たちは慌てて扉を開けようとしましたが、時が止まっているのでビクともしません。ついに、最後の男も消えました。

 モモは時間の花で時を動かし、貯蔵庫の扉をいっぱいに開けました。灰色の男たちの作り出していた寒気は、時間の花を凍らせるためのものでした。人々から奪った時間の花を凍らせ、それを葉巻にして吸うことで生きながらえていたのです。灰色の男たちが消えた今、もう寒気はありません。すると、貯蔵庫の中から、自由となった花々の嵐が巻き起こりました。時間の風に乗って、モモも運ばれていきました。

 静止した世界に、花々が雪のように舞い降りると、あらゆるものが再び動き始めました。人々はこの1時間で起こったことには何も気づきませんでしたが、前と違っているのは、急にたっぷりと時間があるようになったことです。

 せかせかした気分が消え、豊かな感情を取り戻し、人々は楽しく話し合い、ゆったりと仕事をしました。モモも友達と再会し、たくさんの人々が円形劇場あとに集まってみんなでお祝いをしました。眠りから覚めたマイスター・ホラはカシオペイアと一緒に、その様子を、なんでも見える眼鏡でニコニコしながら眺めていました。

モモ/ミヒャエル・エンデの読書感想文(大島かおり訳・岩波少年文庫)

 「モモ」という物語、中学の授業で少しだけ読んだことがありました。その時は、灰色の男とか、時間貯蓄銀行とか、ただのファンタジーという印象でした。でも今あらためて読んでみると、これは、「豊かな想像力で現実世界をたとえたノンフィクションだったのだ!」と気づきます。

 1973年刊行ですが、現代にも変わらず通じるテーマを先取りして描いている、色褪せない物語です。経済が成長していった時代、「成功」や「お金」の影に隠れてなかなか見えなかったであろう「灰色の男たち」の存在、もしかしたら、刊行当時より、現代に生きる人々のほうがよく知っているかもしれません。

 とくに、都会という場所に身を置くと、「時は金なり」という言葉がよく思い浮かびます。みんな、自分の時間を無駄にしないよう、また他人の時間も必要以上に奪ったりしないよう気を遣いながら、神経質に生きていると感じることがあるのです。

 5分後には次の電車が来ると分かっていながら駆け込んできた人々で、まだ人間の入る余地があったかと驚くほどすし詰めになった電車の中、見知らぬ隣の人に体を預け、爪先立ちで揺られながらふと周りを見渡すと、立ったまま眠っているスーツ姿のおじさん、大きな荷物を床に置けず抱えている人、子どもが潰されないよう盾になっているお母さん。ああ、都会の人は大変だと思います。何でもそろっていて、いろんなことに挑戦できて、たくさんの人々に出会える素敵な場所。だけど、ときには夕日を眺めたり、道端の猫と話したり、そんな時間を持たないと、日々に呑まれて心が消えてしまいそうです。

 モモの物語を読んでいくと、時間を大切にする、というのは、「時間を無駄にしない」ことではなくて、「時間を忘れる」ことかもしれないと思えてきて、なんだか不思議な気分になります。今という瞬間、目の前の物事に夢中になっている時、私たちは本当に今を生きて、与えられた時間を大切にしているのかもしれません。時を忘れるほど、大好きなことをしている瞬間、大好きな人たちと一緒にいる瞬間、そんな時を重ね刻んでいく人生は、どんなに幸せだろうと思います。

 マイスター・ホラの家、時の生まれる場所で、モモは、時間とは何かを目の当たりにします。それは、暗い池に差し込む光の中、大きな振り子の近づいた場所に次々と咲いては散っていく、これまで見た中で一番美しい花たちでした。その花が散る時、モモはとても悲しい気持ちになりましたが、次の瞬間には、また振り子が近づいた場所に新しく咲いた花を、これまで見た中で一番美しいと感じるのでした。この場面を読んで、「時間」というものを、これほど豊かに表現した物語を読んだことはなかったと思いました。

 「たった今」というひとときは、どんな過去より未来より美しく、尊い。そしてその「今」が過去に去って次に来る「今」も、やっぱりこれまでで一番美しい。日々の時間をそんな風に感じられるモモは、いつも「今」に生きていて、だからこそ、「未来」の約束と引き換えに「今」を奪おうとする灰色の男たちの取引に応じることはないのです。

 そして、「今」を大切にできるということは、たった今目の前にいる誰かを大切に思えるということ。その相手が自分の「未来」にとってどんな利益があるか、そんなことは考えず、どんな相手であっても、その人との時間を大切にすることができます。だから人々は、そんなモモに癒され、モモと話したくなり、モモと過ごす時間を愛するのだと思いました。

 自分のことだけを考え、我先に生き残ろうと葉巻を奪い合う灰色の男たちには、仲の良い友達だけではなく、マイスター・ホラや人類全体まで守ろうとするモモの気持ちが理解できません。どんな時も目の前にある相手を大切にするとは、出会う人ぜんぶを大切にする、つまり、まだ出会わない人もぜんぶ大切にするということ。モモは、すべてを愛しているのです。どんな状況にあっても、モモのように生きていられたら素敵だなあ、と思います。

 長くなるのであらすじには書けませんでしたが、物語には、モモと特別に仲の良い友達、無口なベッポと、おしゃべりなジジというふたりが登場します。このふたりや、モモを慕うたくさんの子どもたちが、灰色の街で変わっていく様子も、また実に上手なたとえ方で表現されており、切なく愛おしくなります。物語のフィナーレで、自由になった花々が風に乗り人々の元へ舞い戻っていく情景は本当に美しく、感動的です。

 ワクワクするファンタジーのようで、子どもにも読みやすい作品ですが、灰色の男たちによって変えられていく世界は、大人になって初めて、リアリティを持って理解できるようになるものだと思います。日々時間に追われて生きる大人たちにこそ、ぜひもう一度手にとってほしい、そして、しばし時間を忘れて読んでみてほしい、そんな物語だと感じました。(みゅう https://twitter.com/rekanoshuto13


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