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書評「スパイのためのハンドブック」|あらすじ&感想、“本物”のスパイたちの日常や任務内容

2017年10月1日 23時10分 参照回数:

 スーパーヒーロー、ロックスター、スポーツ選手、宇宙飛行士・・・子供の頃に憧れた職業や夢は人それぞれあると思うが、中でも特に夢見る人が多く、大人になってからもその夢を抱き続けている人が多い仕事・・・それはスパイだ。

 自国の秘密工作員や諜報員となって世界を駆け回りたい。数々の特殊な武器を携行し、敵国の秘密基地に潜入したい。そんな映画のような生活に憧れる人々は、どの時代でも後を絶たないが、恥ずかしながら、私もその一人である。

 そんな時、ふと目に飛び込んできた一冊の本。それがこの「スパイのためのハンドブック」(ウォルフガング・ロッツ著/朝河伸英 訳)である。

「スパイのためのハンドブック」のあらすじ

 スパイという言葉を耳にして、恐らく最初に思い浮かべるものと言えば、やはりジェームズ・ボンド=007を初めとした映画や小説で活躍している、秘密諜報員たちであろう。

 本書を手にする大多数の人がこういった、世界を股にかけ、暗躍する特殊なスパイたちの活劇が繰り広げられる一冊だと思うだろうが、本書で描かれているのは、それとは似て非なる内容である。

 本書は、あくまでも"本物"のスパイたちの日常や任務内容、またそれに付随する様々な危機や難所を切り抜けるための極意のようなものが終始綴られている一冊で、決してジェームズ・ボンドやジェイソン・ボーンなどがフィクションの中で繰り広げている外連味のある物語とは訳が違う現実が存在している。

「スパイのためのハンドブック」の感想

 本書を執筆したウォルフガング・ロッツは、16歳の頃から軍に所属し、第二次大戦を経験。その後、イスラエルの諜報機関であり、世界的に見てもその戦術や潜入においてとりわけ高いスキルを誇る"モサド"の工作員として長らく活躍した人物である。

 彼がその素性を公にしたことで、この一冊が世に出ることとなり、彼が経験したスパイ養成期間における様々な訓練から最初の任務、数々の危機や難所を切り抜ける手段などを、ご丁寧に隅々まで事細かに書き綴ってくれている。

 さらにはスパイの素質を測るテストなども同時に載っており、その採点で割り出された数値を基に読者のスパイ適正度を計算できるという楽しさもある一冊だ。

 そのテストもまた「目的のためなら、どこまで法律を無視できるか」や「交友関係」「酒の席での飲酒程度」「異性との関係」など、バラエティに富んでいる。

 決して単独行動や独り善がりの性格だからといって優遇されるというわけではなく、逆にそういった特性がマイナス査定になることもあるため、読者は己と真剣に向き合い、自らのスパイ適正を測ることができるのだ。

 もしも、適正テストに合格したのであれば、次の段階へと進め、身分の偽造方法や尾行の鉄則、もしも逮捕されてしまった場合の対処法から嘘と真実のバランスの取り方、金銭的報酬、刑務所での過ごし方、さらには引退後の隠遁生活にまで話は及び、まさに「スパイのためのハンドブック」というタイトル通りの内容が繰り広げられる次第だ。

 それでいて、決してシリアスになり過ぎず、スパイ特有とでも言おうか、ユーモアに富んだ切り口から話を展開させているため、ヘビーな内容ではない。むしろ、本物のスパイ活動を読者にわかりやすく、娯楽要素高めに演出している印象が強く、次から次へと好奇心を駆り立てられる一冊である。

 本書は物語が繰り広げられる作品ではなく、一種の回顧録であるため、スパイ小説の執筆や映画を製作する上でも大いに役に立つのではないかとも思う。

 本書を読む前と後とでは恐らくスパイ映画などを観た際の印象もガラリと変わると思われ、スパイという職業の真実を知ることができ、知識もより付けることができるだろう。

 この真実はまさに目からウロコであると同時に諜報活動の厳しさも浮き彫りにしていて、スパイになるだけでも相当な壁を乗り越えなければならないという現実を突きつけてくる。

 デスクワークならまだしも、現場に出る工作員となると相当な忍耐と我慢、さらには強固な精神を有していなければならない。選ばれたごくごく一部の人間しか得られない仕事だということを改めて実感させられた次第である。

 最後に本書は、スパイ活動のハウツー本としての役割も十二分に果たしていることから、恋人の浮気や身辺調査をする際にも大いに役立つ一冊だろう。この本を読み終えた時、あなたはスパイの現実を知るとともに、一流のスパイへの道を歩み始めているかもしれない。


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【この記事の著者紹介】
Sunset Boulevard(書評&映画評ライター):
 映画を観ることと本を読むことが大好きな、しがないライター。オススメ小説の書評や読書感想文を通じて、本を読む楽しさを伝えられたら嬉しいです。また幼き日よりハリウッド映画に親しんできたため、知識に関しては確固たる自信があり、誰よりも詳しく深い評論が書けるように日々努力を重ねています。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。Twitter:https://twitter.com/sunsetblvdmovie



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