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【書評】エドガー・アラン・ポー「黒猫/ウィリアム・ウィルソン/アッシャー家の崩壊」

2017年9月28日 14時40分 参照回数:

 エドガー・アラン・ポー。その詩人にして、小説家の男は1849年に40歳と若くしてこの世を去ってしまったが、日本には彼の名を模した江戸川乱歩がいたりと、文学の世界に残した影響の大きさは計り知れない。そんな彼の生誕200周年を記念して2009年に発刊されたのが、この短編集「黒猫・アッシャー家の崩壊」(エドガー・アラン・ポー著/巽孝之訳)である。

「黒猫・アッシャー家の崩壊」おススメ作品

 本書はポーの代表的短編全6編を収録した一冊で、それぞれ毛色が異なりながらもポーらしい怪奇テイストで異様な不気味さが漂う物語がそれぞれ繰り広げられる。今回は、この6編の中から特に私が気になった作品を重点的に紹介していこうと思う。

狂気的で禍々しい「黒猫」

 まず触れたいのが、最初に収録されている、「黒猫」だ。エドガー・アラン・ポーの作品群の中でも特に有名な1本だが、改めて読み返してみると、度肝を抜かれるほどに恐ろしげで面白い話である。黒猫という迷信的な話も多い動物をこれでもかとばかりに不気味に見せつけ、それをさらに狂気的な話に展開させ、最終的には身の毛もよだつ物語に昇華させている。

 最初の作品から、これほどまでに禍々しい話を取り入れてくるとは、かなり秀逸な仕事をして魅せると感心させられたほどだ。これがまだまだホラー小説というものがそこまで躍進している時代に書かれた作品でないことにただただ驚かされ、現代でも全く見劣りしない恐怖を肌で感じさせる。

 本作を読むだけで、ポーが現代ホラーや推理小説にどれだけの影響を与えたのかを思い知ることになるだろう。この後、「赤き死の仮面」「ライジーア」「落とし穴と振り子」と、なんとも言えない悲哀と狂気が混在した秀逸な作品が続いていく。

現代ホラーにも通ずる魅力を備えた「ウィリアム・ウィルソン」

 次に注目したいのが、「ウィリアム・ウィルソン」。同作は"モダン・ホラーの帝王"スティーヴン・キングを彷彿とさせる物語の展開をみせる。俗に言うドッペルゲンガーとされる自分自身の分身のような存在をメインの題材にポー自身が経験したあらゆる出来事が織り交ぜられている作品だ。

 怪奇テイストというよりも、むしろサスペンスフルな描写が際立つ一作で、ふいに現れては消える謎の人物をミステリアスに存在させている。確かに予想した通りのラストではあったものの、そこに至るまでの流れるような展開と読者に好奇心を植え付ける見事な筆舌が功を奏していると言える。

ポーの代表的作品「アッシャー家の崩壊」

 そして最後に本書のタイトルにもある「アッシャー家の崩壊」については、正直、難しい内容で、全体を理解するのは容易ではないが、SFチックな展開も見せながらも、どこか情緒的で、暗さも目立つ。前述の「ライジーア」を彷彿とさせる「美女再生譚」と呼ばれる類のストーリーを織り交ぜながら、不気味で怪奇テイスト。これまで本書で描かれた集大成とでも言うべき作品である。こちらもキングが影響を受けたように感じる情景が広がっており、モダン・ホラーに大きな影響を与えたと感じさせる次第である。

 本書を読んで改めて感じたこと。それは、ポーはやはり詩人であるということだ。

 私の中でエドガー・アラン・ポーと言えば、「大鴉」の印象が強く、不気味な作風を得意とする詩人の印象だが、本作も例外ではない。

 その感情表現豊かで心理的アプローチが強めの描写、主人公の視点から終始繰り広げられる物語を、そのまま読者に体感させようという目論見がひしひしと伝わってくる。

 それが感情移入を誘い作品の世界に引き込むことに成功しており、情景を想像するのも容易。それが、逆にポー自身の作品がどぎつい内容であるため、気分を落ち込ませる要因となっていることは否めない。エドガー・アラン・ポー入門編としては上々の出来栄えで、彼の作品の知識をつけるという面では申し分ない。

【この記事の著者紹介】
Sunset Boulevard(書評&映画評ライター):
 映画を観ることと本を読むことが大好きな、しがないライター。オススメ小説の書評や読書感想文を通じて、本を読む楽しさを伝えられたら嬉しいです。また幼き日よりハリウッド映画に親しんできたため、知識に関しては確固たる自信があり、誰よりも詳しく深い評論が書けるように日々努力を重ねています。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。Twitter:https://twitter.com/sunsetblvdmovie


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