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映画評「ムーンライト」のメッセージとは?|マイノリティ&セクシャリティ、そして少年の成長物語

2017年9月25日 17時50分 参照回数:

映画「ムーンライト」
監督:バリー・ジェンキンス
製作:2016年=アメリカ

 本年度アカデミー賞作品賞を受賞した「ムーンライト」。私も含めて、本作が人種差別を描いた人間ドラマだと勝手に認識してしまっている人は多いかもしれない。だが、本作は人種的な見地から捉えた作品というわけではなく、一人の少年が自分の生きるべき理由や居場所を求めてさまよいながら、大人へと成長していく、一種の成長物語と言える。

「ムーンライト」のあらすじ

 毎日、いじめっ子たちに追い回され、なんとか逃げ果せてきた、少年シャロン。“リトル”というニックネームで呼ばれる彼は、ある日、いじめっ子たちに追われる最中に治安の悪い麻薬地区へと足を踏み入れてしまう。

 そこへ現れた一人の男・フアン。彼はシャロンを食事へと誘い、心を開かせようとするが、名前も住んでいる場所も口にしない。そのためフアンは一度自宅へと彼を連れ帰り、そのまま泊まらせることに。

 翌日、なんとかシャロンの自宅の住所を聞くことができたフアンは、シャロンの母親と対面するものの、一端のヤクの売人であるフアンを彼女は嫌悪し、すぐに引き離す。

 しかし、実はこの母親は筋金入りのヤク中だったのだ。

 それを危惧したフアンは母親を問い詰めるものの、自身も売人であることから、面と向かって意見を言うことができず、影ながらシャロンを見守り続ける。

 時は流れ、成長したシャロンは相変わらずいじめの対象として扱われ、いじめっ子たちから逃げながら、ヤク中の母からもまた酷い扱いを受ける日々を送っていた。

 ある夜、幼馴染のケヴィンと海辺で時間を共にしたシャロンは、そこで自身の感情に気づかされることになる・・・。

「ムーンライト」の感想&映画評

マイノリティを描いていることには変わりないが、希望を持てるストーリー

 本作は言ってみれば、ラブストーリーのようなものだ。

 人種的な問題を描いているわけではなく、マイノリティを描く作品に変わりはないが、セクシャリティや同性愛といったものに重きを置いており、もちろん生きていくのも辛い環境で一人の少年が育ちながら、その人生を描く人間ドラマがメインとなっているものの、最終的に着地するところというのは、思いを抱き続けた相手との再会というラブストーリー的な要素が強い。

 主人公の少年シャロンの少年期、思春期、青年期といった3つの時代から物語は展開され、それぞれに彼の名前やニックネームが施されたタイトルが付けられているのも秀逸で、それぞれで描かれる感情の変化や葛藤などがひしひしと伝わってくるのだ。

 結局のところ、本作が伝えたいメッセージというのは、“周りに流されることなく、自らの人生は自ら切り開け”というもので、自分の居場所を探し続けた少年が最後に本当の自分自身を知り、求めていたものに辿り着くといったストーリーが描かれているのだ。

キャストの演技も美しい

 キャストに関しても絶妙で、本作には、ほとんど白人俳優は登場しない。

 これは人種的な垣根を作らないためだと思われ、決して人種的な話ではないということを伝えているのではないかと感じる。

 そのキャストの中で特に注目してもらいたいのが、シャロンの人生に大きな影響を与えるフアン役を演じるマハーシャラ・アリとシャロンの母親を演じるナオミ・ハリスだ。

 マハーシャラは本作の演技でアカデミー助演男優賞にも輝いたほどの貫禄の演技を魅せるのだが、その登場時間は至って短く、およそ30分ほどしかない。

 それでもこれほどまでに深い印象を残す彼の演技には圧倒され、また唯一と言って良いほどに本作において、ひたすら優しいオーラを漂わせた存在だ。

 一方のナオミ・ハリスは、これまでも数多くの作品で卓越した演技を披露してきたが、本作ではそのどれとも一線を画すほどに素晴らしい表情を魅せる。

 決して賛同できるようなキャラクターでもなく、むしろ観客からしたら悪役的立ち位置にいる存在だが、ヤク中に陥り、息子を煙たがる母親が、後々息子を気づかう姿を魅せるようになるまでの変貌を遺憾なく演じきっており、感情移入を誘うのだ。残念ながらオスカーは受賞できなかったものの、それに匹敵する演技と言える。

 主人公を演じた3人の俳優もしかり、キャストの演技は皆素晴らしく、重厚なアンサンブルが繰り広げられている。

 その情緒的な音楽や色彩豊かな映像表現など、映像そのものが表情を持っているかのように魅せる。

 同性愛というものを美しく、静かに、また大胆に描ききった作品が、この「ムーンライト」である。

 人種などを念頭に置かず、ただ一人の少年の成長を追う形で鑑賞してもらいたい。



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【この記事の著者紹介】

Sunset Boulevard(書評&映画評ライター):映画を観ることと本を読むことが大好きな、しがないライター。オススメ小説の書評や読書感想文を通じて、本を読む楽しさを伝えられたら嬉しいです。また幼き日よりハリウッド映画に親しんできたため、知識に関しては確固たる自信があり、誰よりも詳しく深い評論が書けるように日々努力を重ねています。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。Twitter:https://twitter.com/sunsetblvdmovie


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