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書評「ミッキーマウスの憂鬱」のあらすじと読書感想文|青春小説では収まりきらない興奮と驚き

2017年9月25日 17時30分 参照回数:

 普段、日本の小説はあまり読まず、洋書を主に読み進めている私が久々に日本人の登場人物たちが主要の物語に胸を躍らせた。松岡圭祐 著「ミッキーマウスの憂鬱」だ。まずこのタイトルにただならぬ興味を惹かれてしまい、すぐさま書店へ走った。一体どんな作品なのだろうか? そんな高まる期待感を抱きながら、ページをめくり続けたのだった。

ミッキーマウスの憂鬱のあらすじ

 物語は言わずと知れたテーマパーク 東京ディズニーリゾートが舞台。そこで派遣の準社員として働くことになる21歳の後藤大輔がジャングルクルーズのクルーのオーディションを受けるところから幕を開ける。

 ぎこちない態度でオーディションや面接を受ける後藤だったが、見事合格を果たし、憧れだった“夢の王国”での仕事を手にする。

 お客を“ゲスト”と呼び、従業員を“キャスト”と呼ぶその職場での仕事には予想をはるかに超える厳しさと現実があり、後藤は半ばこの仕事に就いたことを後悔し始める。

 もっとやり甲斐のある仕事がしたい、ゲストに夢を与えられる仕事がしたい・・・そう意気込んで臨んだ仕事は、決して表舞台の“夢”とは相容れないもので、想像もしていなかった現実が待ち構えていたのだ・・・。

 だが、数々の先輩準社員や正社員、ゲストとの関わりを通して、新米だった後藤の胸に少しずつ変化が現れ始める・・・。

ミッキーマウスの憂鬱の読書感想文

どこまでが本当? “夢の王国”の知られざる裏側を描く

 東京ディズニーランド及びディズニーシー、いわゆる東京ディズニーリゾートに一度でも足を踏み入れた経験があるなら、本書に胸が踊らないはずがない。もはや都市伝説と化している数々の噂や真実が、この物語では描かれているのだ。

 しかし、物語の最後に「この物語はフィクションです」と記されていることから、全てが事実とは限らないし、どこまでが本当かもわからない。

 そんな懐疑的なテーマを扱いながらも、物語に惹きつけられる。

 その理由は恐らく、誰しもが抱いている疑問、そして“夢”が本書では描かれているから。

 ミッキーマウスなどのディズニーキャラクターたちの“正体”、誰しもが知るテーマパーク内に隠された“キャスト”たちのみが足を踏み入れることができる裏舞台、そしてキャストやクルーの間で渦巻く上下関係など、意図すれば夢を壊しかねない内容が小気味よく書き綴られているが、大人になってから読む本書には、どこか仕事に対する情熱や本当の意味での“夢”が描かれているようにも思う。

 それは新人の後藤が憧れ続けた夢の王国で、ゲストたちの夢を支えるために尽力する姿や規則にばかり縛られず、本当に大切なことを体現していく様から大いに伝わってくるのだ。

 その純粋無垢な後藤というキャラクターの存在が東京ディズニーリゾートのある意味でのファンタジー的な部分を浮き彫りにしながら、逆にさらなる夢と現実を与えてくれる。

 中盤から終盤にかけては怒涛の展開が繰り広げられ、ディズニーシーにあるアトラクション「海底2万マイル」の真下の地下で、とある救出作戦が行われ、文字通り「海底2万マイル」のごとく描写もなされている。

 スリリングにサスペンスフル、壮大なアクションでもある本書は、青春小説のジャンルではあるものの、その枠に収まりきらないほど、興奮と驚きに満ちた作品だ。

 どこまでが事実で、どこまでがフィクションかは恐らく現場で働いてみないとわからないだろう。

 私はディズニーと少しだけ仕事で関わったことがあり、友人にディズニーランドで働く者もいるが、ゲストたちに夢を与えるキャストたちの仕事にかける情熱や徹底ぶりが東京ディズニーリゾートを支えていることを改めて認識させ、国家の行く末も左右しかねない本社ディズニーとの関係性や徹底して厳しい現実が全体的に描かれているものの、どこかこの職場で働きたいという気持ちをも思い起こさせる。

 “夢の王国”の実態を暴露した内容であると同時に、決して悪いようには描いていない秀作。久しぶりに読んでいて、ものすごく楽しい一冊であった。

 最後に本書を手に取ろうと考える際には、できるだけお子さんには気づかれないように。本書には“着ぐるみ”という言葉がそこかしこに出てくるので、ご注意を。登場人物たちと共にゲートを潜り抜け、新たな視点から東京ディズニーリゾートを楽しんでもらいたい。


【この記事の著者紹介】
Sunset Boulevard(書評&映画評ライター):
 映画を観ることと本を読むことが大好きな、しがないライター。オススメ小説の書評や読書感想文を通じて、本を読む楽しさを伝えられたら嬉しいです。また幼き日よりハリウッド映画に親しんできたため、知識に関しては確固たる自信があり、誰よりも詳しく深い評論が書けるように日々努力を重ねています。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。Twitter:https://twitter.com/sunsetblvdmovie


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