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映画評「スパイダーマン:ホームカミング」、“親愛なる隣人”の成長物語として青春映画に|あらすじ&キャスト解説も

2017年8月17日 9時20分 参照回数:

映画「スパイダーマン:ホームカミング」
監督:ジョン・ワッツ
製作:2017年=アメリカ

 近年、ハリウッドではアメコミ作品の実写化が大流行りで、1年に何本もの作品が公開となっている。その中でも特に世界中が期待している作品と言えるのが、「スパイダーマン」であろう。「スパイダーマン」は、2000年代に入ってからハリウッド映画としてすでに2度実写映画化されており、今回「スパイダーマン:ホームカミング」が3度目となる。なぜ人々は数年に一度生まれ変わる「スパイダーマン」に期待をいだき続けるのだろうか?

「スパイダーマン」の歩み、こだわりが強すぎるが故に試行錯誤

 1962年に発刊された「アメイジング・ファンタジー」第15号に登場以来、コミックだけに留まらずアニメやゲームのキャラクターとして世に送り出されてきた「スパイダーマン」。2000年代最初の映画化となった2002年の「スパイダーマン」は、監督に「死霊のはらわた」などホラー作品を得意としているサム・ライミを起用。主演に実力派俳優トビー・マグワイアを抜擢し、製作された。

 ライミらしい独特の怪奇テイストを織り交ぜながら、ヒーローの活躍、苦悩や葛藤、愛する者を守るために身分を隠さなければならない展開など、王道でヒロイックなストーリーが繰り広げられた。アメコミ特有の外連味のある映像も相まって、それまでの実写アメコミ映画の概念を覆すような作品として大ヒットを記録した。

 本シリーズはその後2作の続編が製作され、興行的には大成功。続く4作目の製作も視野に入れていた。

 しかし事はそう上手くは運ばなかった。後に幻となってしまう4作目として上がってきた脚本の酷さから出演者や監督との距離ができてしまい、なおかつ「スパイダーマン3」の評価が今ひとつだったことを受け、企画は頓挫。仕切り直して、新たにシリーズ化することを決定したのだ。

 「スパイダーマン3」の公開から5年後の2012年、新たに「アメイジング・スパイダーマン」としてリブート。

 監督にマーク・ウェブ、主演には若手実力派のアンドリュー・ガーフィールドを抜擢。シリアスでドラマ性に富んだストーリー展開とし、3Dなどの普及から、アトラクション要素が強めの映像を映し出すという新鮮な作品に仕上げるという名目の元、新シリーズが幕を開けたのだ。

 ヒーローの誕生から使命を負うことになったいきさつ、さらにはスパイダーマンになる青年ピーター・パーカーの過去にも焦点を当てており、全体を通して丁寧に描ききった印象が強いが、こちらのシリーズも今後の展開を匂わせながらに2014年の「アメイジング・スパイダーマン2」をもって打ち切りとなってしまい、また仕切り直しとなってしまったのだ。

 ここまでの経緯を振り返ってみると、アメリカのファンを中心に人々は「スパイダーマン」という作品に対して大きな愛を抱いており、そのこだわりが強すぎるが故に意見が交錯してしまうのだろう。だからこそ、次に実写化される時には、そういったファンの意思を汲み取りながらも、全く新しいスパイダーマンを描くことが絶対条件となっていたのだ。

 そして2016年、「アイアンマン」や「キャプテン・アメリカ」といった「アベンジャーズ」の面々が集結するシリーズMARVEL Cinematic Universeの一環としてスパイダーマンが「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」に登場。

 これまでの能力を得ることになったきっかけなど、もはや周知の事実である事柄を全て排除し、代わりにアイアンマンことトニー・スタークと大きく関わらせる形で、新たなスパイダーマン像を描き出したのだ。これには軒並み好意的な評価が寄せられ、今後の単独映画にも大きな期待感を抱かせたのだ。

 そして、その期待作「スパイダーマン:ホームカミング」がこの夏、公開となったのだ。

あらすじ:「スパイダーマン:ホームカミング」

 幾多の歴史を歩んできた「スパイダーマン」映画だが、率直な感想を言わせてもらえば、本作はそのどれとも一線を画す全く新しい「スパイダーマン」映画だったと言える。

 トニー・スターク=アイアンマンとスティーブ・ロジャース=キャプテン・アメリカの内戦に参加したピーターは、トニーからハイテクのスーツをもらいアベンジャーズの一員になったと勝手に解釈。近所を守るヒーローとして活躍しながらももっと大きな戦いに身を投じたいと感じていた。

 ある日、銀行強盗を取り押さえようとしたところ、大きな被害を出してしまう。銀行強盗は普通ではない武器を有し、スパイダーマンと対峙したのだ。

 この武器を売買しているのが、本作のヴィラン(=悪役)であるエイドリアン・トゥームス=バルチャーである。

 彼はアベンジャーズが戦いの最中に生み出した数々の“戦利品”を武器として製造。自らもアーマーを身に纏い、スパイダーマンに挑戦してくるのだ。

解説:「スパイダーマン:ホームカミング」、ヒーロー映画を青春映画へと昇華させた新しい成長物語


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 見せてやる、僕の力を ― 。そんなキャッチコピーで宣伝されている本作だが、その通り、本作は普通の15歳の高校生ピーター・パーカーの成長物語なのだ。

 本作のタイトルにある「ホームカミング」というのは、アメリカの高校などで行われるダンスパーティーのことを指しており、そこからもピーターの高校生活つまり青春にフォーカスされているのが伺える。

 これまでの「スパイダーマン」は、ヒーローとしての活躍に重きを置き、私生活というのは脇に追いやられていた。しかし、本作はどちらかと言えば、ピーターの高校生活を中心としているとさえ言えるのだ。

 スパイダーマンとして活躍する場面でもピーターの私生活が大きく関係しており、冴えない高校生が放課後の部活のような感覚で近所の平和を守る。そういった軽い感覚が今回の「スパイダーマン」の魅力と言えて、より一層彼の“親愛なる隣人”いう愛称がマッチした作品といえよう。

 監督自ら影響を受けた作品として挙げている「フェリスはある朝突然に」などに見られる青春コメディらしい描写が際立っている。決してヒーローとして成熟しきっているわけではなく、まだまだこれから成長していくヒーローという、まさに「スパイダーマン」の真髄とも言える作品が本作なのだ。

 ヒーロー映画というその時々の世情を映し出す鏡のような役割を果たすジャンルにおいて、このようなヒーロー像が描かれるようになったというのはとても現代的なように思う。

ハイテク機能や悪役にも注目

 またこれまでの作品と一線を画している部分は、その青春要素だけではない。スパイダーマンのスーツと言えば自作のスーツで、手首から蜘蛛糸が発射されるウェブシューターぐらいしかハイテク機能はなかったが、本作に登場するスーツは、トニー・スタークが製作したということもあり、装着者にフィットする機能や偵察機など、ありとあらゆるハイテク機能が装備されている。

 そういった機能を駆使してスクリーン狭しと駆け回るスパイダーマンの姿もまた新鮮に映ったしだいである。

 悪役に関しても同じことが言えて、前2シリーズでは登場しなかったバルチャーとショッカーといった初期の敵キャラが登場するのもファンにとっては嬉しいことだ。

 「スパイダーマン」を観たというよりも、青春コメディを観たという印象を大きく受け、若干の物足りなさはあるものの、ファンが求めていたスパイダーマン像を体現し、待ち望んでいた「スパイダーマン」映画が誕生したと言えるだろう。

フレッシュな若手とベテランが織りなすアンサンブル

 本作から本格的にピーター・パーカー=スパイダーマンを演じるのは、新進俳優トム・ホランド。スパイダーマンの持つ親近感の湧く魅力や好青年らしさを存分に醸し出し、魅力たっぷりに演じきっている。その爽やかなオーラと初々しさが相まって、これまでのスパイダーマンよりもどこか応援したい気持ちにもさせる。一生懸命さがしっかりと伝わってくるのだ。

 一方、悪役のバルチャーを演じるマイケル・キートンは、ベテランらしい確かな演技を披露。これまでのキャリアで「バットマン」や「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」などに出演してきた名優が再び鳥人間に扮しているのはファンをクスッとさせ、その怪優っぷりを大いに発揮した表情は思わず鳥肌が立ってしまうほどに貫禄たっぷりだ。また「スパイダーマン」シリーズに登場する悪役というのは社会から疎外された人間が多く、彼もまたそういった類のキャラクターを遺憾なく演じた印象が強い。

 その他の登場人物としては、若くてセクシーなメイおばさんを演じるマリサ・トメイ、ジェイコブ・バタロン演じるネッド、トニー・レヴォロリ演じる全く新しいフラッシュ、ローラ・ハリアー演じるピーターの恋のお相手リズ、ゼンデイヤ演じる今後重要なキャラクターとなるミシェルなど、若々しくフレッシュなキャストたちがここぞとばかりに魅力的な演技を魅せていた。

 もちろんアイアンマンことトニー・スタークを演じるロバート・ダウニーJr.やその相棒ハッピーの登場も見逃せず、しっかりと主役を支えるサポート的な役割を果たしたように思う。

 青春映画として新たに登場した新生「スパイダーマン」。

 ヒーローとしてはまだまだ未熟だが、これから描かれるであろう成長物語を意識した1作目と考えれば上々の出来栄えであるし、全体を通して描かれる思春期のピーター・パーカーの姿には誰もが共感できるものだろう。

 「スパイダーマン」ファンには堪らないオープニングとヒーロー映画とは思えない斬新なエンドロールも含めて、ぜひ、最後まで観てもらいたい!

(文=Sunset Boulevard Twitter:https://twitter.com/sunsetblvdmovie




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