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映画評:逆輸入の特撮「パワーレンジャー」…世界よ、これが特撮だ! アメリカで受け入れられた理由とは?

2017年7月29日 15時40分 参照回数:

映画「パワーレンジャー」
監督:ディーン・イズラライト
製作:2017年=アメリカ

「パワー・レンジャー」が、“ハリウッド映画”としてやって来た


 特撮と言えば「ウルトラマン」「仮面ライダー」「スーパー戦隊」の3大巨塔が思い浮かぶものだが、この2017年、ハリウッドが日本の特撮作品を本気で実写映画化し、大きな話題となっている。それが「パワーレンジャー」だ。

 詳しい人なら承知だと思うが、「パワーレンジャー」は1993年に日本の「恐竜戦隊ジュウレンジャー」を基に子供向け作品として、アメリカで初めて放送された作品。

 「マイティ・モーフィン・パワー・レンジャー」と題されたこの作品は全米で“超”が付くほどの大ヒットを記録し、これに伴って発売されたグッズも相当な売り上げ数を記録。クリスマスシーズンには社会現象となり、品薄状態が続いたとさえ言われている。

 そんな「パワー・レンジャー」が、“ハリウッド映画”としてスクリーンにやって来たわけだが、日本の特撮作品はいかにして、ハリウッドが本気を出して映画化しようとするまでになったのか?その経緯を振り返りながら、「パワーレンジャー」の感想を綴っていきたいと思う。

日本の特撮作品がハリウッドで辿った歴史


 特撮と言ってまず最初に思い浮かぶのが、恐らく「ウルトラマン」であろう。ご存じ円谷プロが誇る「ウルトラマン」は1966年より放送が始まり、今なお続く、日本を代表するヒーローであるが、初期の「ウルトラマン」や怪獣映画の特撮技術というのは現代のVFXなどの前進としても語り継がれているのだ。

 その要因は当時、「激突!」や「ジョーズ」といった作品で新進気鋭の監督として名を馳せていたスティーヴン・スピルバーグが、日本を訪れ、円谷プロを訪れたことにある。

 スピルバーグは日本の怪獣映画などからその特撮技術に強い関心を抱き、はるばる日本までやって来たのだという。そこで実際に現場を目撃し、あらゆることを質問し続けた彼は、後にSF界を代表する監督としてその名を知られるようになった。

 こういったことから日本の特撮作品というのは、ハリウッドから熱い眼差しを受けることになる。そんな中、最初にハリウッド進出を果たした特撮ヒーローというのが「ウルトラマン」だった。

 「ウルトラマンパワード」と銘打った作品は、ハリウッドの総力を結集して製作された期待のTVドラマであったが、これがアメリカ国民にはイマイチ受け入れられなかったようで、『なぜ地球の怪獣を倒しに、宇宙人が助けに来るのか?』や『巨大化するヒーロー』といった、そもそも「ウルトラマン」が持っているコンセプトに対し、大きな疑問を生んでしまったようで、大ヒットというわけにはいかなかったのだ。

アメリカでは等身大のヒーローが受け入れられた


 しかし、この「ウルトラマンパワード」と同時期にハリウッドに進出し、大きな成果を上げた作品があった。それが「パワーレンジャー」だ。

 日本では5人組のヒーローが活躍する「スーパー戦隊」シリーズとしておなじみの作品だが、5人それぞれに個性があり、等身大のヒーローということから、こちらはアメリカ国民に受け入れられた。よく考えてみると「超人ハルク」などを除けば、「スーパーマン」も「スパイダーマン」もほとんどが等身大のスーパーヒーロー。そういった点でも「パワーレンジャー」はアメリカ人の心を掴む理由が多くあったように思う。

 ともあれ前述のとおりこの「パワーレンジャー」は大ヒットを記録!今でも続々と新ヒーローが誕生しており、アメリカの子供たちの心を鷲掴みにしているのだ。

 そして、そのアメリカ国民の心に強く残り続ける日本原作の特撮作品が、ハリウッドで一大フランチャイズとして製作され、近年のアメコミ・ヒーロー映画に対して、挑戦状をたたきつけたのだ!

「パワーレンジャー」あらすじ


 紀元前に戦っていたパワーレンジャーは、強大な悪を滅ぼすために自らのパワーを絶って、地球を守った。

 時は流れ、現代。フットボールの花形選手である高校生のジェイソンは、ある事件をきっかけに人生を棒に振ってしまう。居残り授業への参加を余儀なくされたジェイソンは、そこで出会ったビリーと共に炭鉱へと向かうが、そこに居合わせたキンバリー、トリニー、ザックらと不思議な遺跡を目の当たりにする。

 そここそ古代から存在するパワーレンジャーの力を秘めた場所であり、彼らは選ばれし者として今後訪れるであろう脅威から地球を守る使命を帯びることになる……。

「パワーレンジャー」感想


 もしも「パワーレンジャー」を子供を対象にしたヒーロー映画だと思っているとしたら、それは大きな間違いである。

 本作は地球を守るヒーローたちが活躍する超大作映画であるものの、同時に青春映画としての役割も非常に大きいと思う。実は本作における戦闘シーンというのは、全体の3分の1程度。あとは、落ちこぼれとして周りから疎外された、いわゆる負け犬たちがチームとしてまとまるまでの過程や彼らがいくつもの壁を乗り越えていく姿などに注視されている。

 この明らかな戦闘シーンの少なさというのは、アメリカの放送倫理的なものが背景にあるようで、子供向け作品の場合は顔や胸を殴ってはいけないであったり、追い打ちをかけるような攻撃をしてはいけないといった、規制が多く存在しているからだという。

 アクション満載で、けれんみのある映像を想定して鑑賞したために、若干の不意打ちを食らってしまったが、逆にその不意打ちが功を奏したように感じた次第である。

 劇中でも挿入歌として流れるのだが、本作は「スタンド・バイ・ミー」的な印象が強い。未知のものと遭遇し、お互いを支えあいながら苦難を乗り越えていく、ただのSFヒーロー作品に留まらず、今後、青春映画のバイブルとしても定着していくのではないかと思わせるほどなのだ。

 これは監督を務めたディーン・イズラライトの映像作家としての手腕も大きく関係していると思う。

 彼は2014年の「プロジェクト・アルマナック」という作品で、タイムマシンを自主開発した高校生の冒険劇をPOV方式で描き出した監督としても知られており、同作の製作を担った巨匠マイケル・ベイにもその才能を高く評価された。

 強大な力を手にしてしまった若者たちの葛藤や好奇心を絶妙なバランスで映し出すことのできる新鋭で、彼が監督したからこそ、戦闘シーンの有無を問わず、退屈せずに鑑賞できた要因と言えるだろう。

 「パワーレンジャー」が監督第2作となるディーン・イズラライトに今後も注目だ!

「パワーレンジャー」キャストについて


 本作は監督も新鋭ならば、キャストもフレッシュな若手揃いである。

 主人公レッドレンジャー=ジェイソン役のデイカー・モンゴメリーは本作がハリウッドデビュー作とは思えないほどのカリスマ性を感じさせ、抜群の存在感を放つ。今後ブレイク間違いなしと言えるだろう。

 ピンクレンジャー=キンバリー役のナオミ・スコットは、ディズニー・チャンネルの「レモネード・マウス」やマット・デイモン主演「オデッセイ」などへの出演を経て、今に至る女優だが、彼女もまた魅力的な演技を終始魅せてくれる。今後は実写版「アラジン」でヒロインのジャスミンを演じることになっているなど、今ハリウッドで最も期待されている女優だ。

 イエローレンジャー=トリニー役のベッキー・Gはシンガーとしても注目を集め、ブルーレンジャー=ビリー役のRJサイラーは実力派若手俳優として将来を渇望され、ブラックレンジャー=ザック役のルディ・リンはアジアで人気急上昇中の俳優と、今がまさに旬な若手たちが総出演している。ここから世界的に飛躍していく俳優たちの初々しい演技にも注目だ!

 また脇を支えるベテラン俳優にも注目で、5人の若者たちを導くゾードン役のブライアン・クランストンは、海外ドラマ「ブレイキング・バッド」のウォルター・ホワイト役で3年連続エミー賞を受賞したほどの名優。面白いのが、過去にはTVシリーズ版「パワーレンジャー」への出演歴もあり、そういった点でもファンを楽しませてくれる。

 悪役のリタ・レパルサを熱演するエリザベス・バンクスは、思う存分にパワーレンジャーや一般市民を苦しめているが、実はこういったヒーロー映画の悪役として女優が起用されるというのは極めて稀なことらしく、革新的かつ挑戦的な役柄を見事に演じ切った印象である。

 アメコミ映画をも凌ぐ、超大作「パワーレンジャー」。続編製作のカギは日本の興収にかかっていると言われているので、皆さん、ぜひ劇場に足を運んでくれ! 「パワーレンジャー」のテーマが流れた瞬間は鳥肌だ。

 世界よ、これが特撮だ!

(文=Sunset Boulevard Twitter:https://twitter.com/sunsetblvdmovie))









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