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ミニシアター通信本&映画 > 中村文則「悪と仮面のルール」

書評「悪と仮面のルール」(中村文則)|あらすじ&読書感想文、玉木宏主演の映画化にも期待

2017年5月10日 23時30分 参照回数:


 中村文則さん原作の『悪と仮面のルール』が2018年に映画化することが決定しました。中村さんは国内でも数多くの賞を受賞されていますが、日本人で初めて、優れた犯罪小説作家に贈られるデイビッド・グディス賞を受賞したことで、米国でも有名な作家さんです。『悪と仮面のルール』もまた日米ともに注目された作品であり、原作の面白さに加え、玉木宏さんが主演を務めるということで、映画にも期待が集まっているようです。

悪と仮面のルールのあらすじ

 主人公の文宏は、世界的にも権力を持つ久喜家の末子として生まれました。文宏は11歳の時、父親から書斎に呼ばれ自分の人生についての話を聞きます。その父の話とは次のようなものでした。

「お前の命は、私が意図的につくった。これは我々の家系で時々行われることだ。人生の終わりを感じた時、一つの“邪”を生むことで、その余興を楽しみに、死への恐怖、その気分を紛らわせる、、、。」

 家系に代々伝わる悪の行為と、文宏の出生の裏側を明かした父は、さらに文宏の行く末をこう断言するのです。

「14歳になった時、お前に地獄を見せる。15歳の時に一度、16歳の時に二度またお前に地獄を見せ、お前はお前の存在に関するもう一つの真実を18歳の時に知ることになる。―お前はこの国の中枢に入り悪をなす。願わくば、この世界がいつか終わるように。」

 この父の告白後、文宏と同じ年の少女「香織」が、一緒に生活するため屋敷に連れてこられます。香織は父親にとって文宏に地獄を味合わせる道具であり、文宏は香織と親密になればなるほど、父の言葉に囚われてしまうようになります。

 文宏は香織を守るために、父の殺害を計画し実行します。父という悪を倒すためとはいえ、結果として自らも悪を働いてしまったのです。文宏は“邪”という宿命に逆らい幸せを求めるも、14歳という若さで父殺しという罪を背負い生きていくことになりました。

 香織との幸せを手に入れたかのように思えた文宏でしたが、成長するにつれ久喜家の血が濃く顔に現れ、だんだんと父に似ていきます。香織はそんな文宏を無意識に拒絶するようになり、文宏は香織やこれまで住んでいた屋敷を離れ一人で生きていく道を選択したのです。

 そして文宏は自らの顔を他人の顔へ整形し、名前を変え、探偵を雇い、ひっそりと香織を見守るように暮らすことになります。

 しかし久喜という“邪”の家系からは逃れることができず、いくつもの事件に巻き込まれ、その度に香織を守るために罪を犯してしまいます。

 文宏は香織を守ることができるのでしょうか、、、。それとも父の予言通り“邪”に染まってしまうのでしょうか、、、。

悪と仮面のルールの読書感想文


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 ある悪に打ち勝つために悪という手段を使って、自分や大切な人を守る正義は正しいのか、というテーマがこの小説の主題の一つになっていると思われます。

 特異な家系の中で、社会に対して“邪”となるように育てられる。それは一般常識とはかけ離れており、自分を正しく守ってくれる大人がいない中で、主人公の文宏が正しくあるために行った悪というのを、一概に間違った行為と判断するのは難しいでしょう。しかし文宏は、自分たちの正義のために父を殺した事実を悪と認識しているシーンがありました。それは大人になり顔と名前を変えた文宏が、なぜ人を殺してはいけないのか、というある人からの質問に対しての次のような答えからです。

「人間を殺せば、その人間は、その後の美しいものとか、温かいものとかを、真っ白の感情で受け止めることができなくなる。……何か人生の美を感じた瞬間とか、人生の温度を感じた瞬間とかに、自分が人間を殺した事実が、自分の内面でうごめいてくる。」

 文宏は父を殺してしまった、という行動にひどく苦しみ、自分が悪を働いたせいで、もう幸せになることはない、と考えているようでした。

 そんな苦しみにも関わらず、香織に危険が迫る度に、悪を持って悪を制し続けるのは、文宏が“邪”という存在に育ってしまったからなのでしょうか?

 ―おそらく違います。文宏は“邪”でないからこそ、悪に苦しんだのでしょう。悪への苦しみこそが“邪”に屈してはいないという証明になるのです。

 暗闇の中で一生戦い続けるような話ではありましたが、だからこそ愛や信頼という光が目立つ、どこかにまだ希望があると思える、そんな小説でした。

映画について

 玉木宏さんは文宏の役を演じるにあたり

「非常にデリケートで難しい役柄だと感じました。結論から言うと、文宏は整形をして他人の顔を手に入れ、覚悟を決めて進もうとするが、人の内面は整形出来ない。悪に対して理性があるが故の脆さを大切に演じたいと思いながら、この作品と文宏という役に向き合いました。」

 とコメントを寄せています。

 『悪と仮面のルール』は2018年に全国ロードショー。悪の本質や人の内面に迫る、そんな映画となるのではないでしょうか。(ミーナ)



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